ホームへ戻る 二戸編

森林のエネルギーを活かそうin岩手 〜スウェーデンにまなぶ〜
住田町視察編

日時:平成14年2月4日(月)11:30〜17:00
出席者:スウェーデンからの招聘者、岩手・木質バイオマス研究会員、住田町・林業・製材業・住宅・設計関係者等約80名

【住田町立世田米保育園 ペレットボイラー】

二光エンジニアリング(株)製のペレットボイラー。定格熱出力25万kcal/hで680uを暖房する。
ボイラー棟は34u。ボイラーおよびボイラー棟建築・工事費は約2千万円。
ペレット代は2万6千円/tで燃料費は20万円/月を予定している。
灰は集塵機で回収し、農業用肥料として活用予定。




【三陸木材高次加工協同組合 木屑焚ボイラー】

製材で出た木屑を、焼却炉でただ燃やすのではなくボイラーの燃料として使用している。
ボイラーで発生した蒸気を木材乾燥室への補填、プレス室への暖房等に利用。
木材の乾燥には1450円/立方bの燃料費がかかるが、その半分の費用をこのボイラーでまかなえる。



【木質バイオマス意見交換会「住田町への導入を考える」】

時間:15:00〜17:00
場所:住田町農林会館 多目的ホール
主催:住田町、岩手・木質バイオマス研究会、ジェトロ盛岡貿易情報センター
登壇者:スウェーデンからの招聘者2名。通訳 徳永、小倉。司会 金沢

1. 「住田町の取り組み」
住田町長 多田欣一氏

住田町の場合はなぜ木質エネルギーかというと町の92%が山林だからだ。
環境条例その他環境法ができたことにより、野焼きができなくなってきた。
木材の端材、皮の部分、山に捨てられている木をなんとか利用して新しいエネルギーとして
活用していきたいというのが導入の発端だ。
平成13年度はバイオマス現存量の調査をし、保育園にペレットボイラーを入れた。
平成14年度にはペレットストーブを2台ほど公共施設にいれる計画。
平成15年度にはペレットの製造をしていきたい。

2. 「ペレット燃焼機器の導入により期待される効果と使用上の注意」



スカンペレット(株)社長 ヨーゲン・ニーセル氏

<会社概要>
2〜50kwの小型ペレットバーナー、ペレットストーブを一般家庭向けに製造・販売している。
15年のキャリアがあり、バーナーが1998年から6000台、ストーブが2500台の販売実績。
2000年の実績はバーナーが2000台、2001年は3700台。25人の従業員で、年間売り上げは500万ドル。

<ペレットバーナー>
ペレットバーナーは1991、92年から使われており、95年から簡単な構造で新しいタイプの機械の開発を始めた。
20kwのものは普通の家庭用で、50kwのものはかなりの大家族や小規模な産業用に使われる。
スウェーデン全体では一般家庭用の20kwまでの比較的小型のものが3万台ほど出ている。
もっと大きな500kwまでのものが500台ほど出ている。
スウェーデンでのペレットバーナーのコストは電気を使用するものに比べ、
半分のコストでまかなえる。
1年半でその投資した分の金額が返ってくるので経済的な面からも非常にいい。
製品の保証システムは8種類ほどあり、市場を広めるには重要である。
質のいい燃焼を行うことで環境にも大変貢献できる。

<普及させるには>
市場で成功するには、お客様に作りが非常に単純であることをわかっていただき、
いい機械やいいシステムに対して証明書、保証書のようなものを考えることで信頼を得ることが非常に重要である。
ペレットを作っている会社との間の協力が非常に重要になる。
スウェーデンではさまざまなペレットがあり、それぞれによって大きな違いがあるので
レベルの高いものを提供していくように努力をしている。ペレットバーナーの製造者と
ペレットの提供者とのきちんとした関係を構築し、情報を得られるようにしておくことが重要だ。
燃料の供給ができなければいくらバーナーのほうが普及しても市場は育っていかない。
市場の外で教育をもっと広めることが重要。
あらゆる人たちが新しいシステム、エネルギーを考えなければならない。
ペレットを住田町で作ることはこのシステムを広めるいいチャンスだ。
ペレットのコストはかなり運送費のほうでかかってしまうのだが、
地元のほうで調達できるようになれば経済的には非常にメリットになる。

3. 「チップ燃焼機器の設置上の課題と普及」
ヤーンフォーセン エネルギーシステム(株) マネージャー マッツ・グランストランド氏

<会社概要>
1984年設立。15年間で、20ヵ所500社以上のクライアントに大型のチップバーナープラントを提供している。
2000万ユーロ(20億円)の年間売り上げ。

<スウェーデンの歴史>
スウェーデンにはバイオエネルギーを使う長い伝統がある。
その理由として、環境にやさしいことと経済的なメリットが得られることがある。
製材所から出る廃棄物、端材などはそのままにしておいても、結局は処理をほどこさなければならないので
どうにか利用しようとした。端材をそのままストーブにくべて燃やすと、効率が非常に悪く、
燃焼としてはよくないので、たくさんの煙があがる問題が起きている。
この悪い燃焼を質の高い燃焼にして環境にやさしくするためにはどうしたらいのか、
経済的な面から考えて効率を上げていくにはどうしたらいいかということで、
ペレットを使うことがスタートした。

<チップを燃料に>
 私たちはかなり大型のチップバーナープラントを供給しており、主に地域熱供給などに利用されるものだ。
ペレットだけではなく、生の原料(チップなど)を使うことも可能で、直接製材所や林から
持ってきたものも使える。その場合、含水率が変わってくるのでパワーのあるバーナーが必要になる。
湿ったものを使うときは時間をかけてそれをプラント内で乾かすことが必要になる。

<普及させるには>
特にお客様にとって重要なのは効率がいいか、安全性が高く安定した運転ができるか、
燃料が環境にやさしいものかという点である。
バイオエネルギーの使用を始めるにあたって重要なことは現在の状況を正確に捉えることだ。
どのような材料を使えるのか、お客様がどのようなことを求めているのか、
それらのことを考えた上で決断をしたほうが最良の結果を得られる。
バイオエネルギーに関しての計画やアイディアがあるが、十分注意をはらわなかった、
あるいは具体的に考えなかった、それが決まらないうちにスタートしてしまったということになると、
始める直前になって問題があちこちから出てくることになる。

4. 質疑応答

<スウェーデンでは家庭用のバーナーと地域エネルギーや産業用の大型バーナーでは
どちらが先に普及したのか。今後はどちらのほうに需要の展望があるか>

最初は製材所で樹皮や木屑などを処理できないか、コミュニティで地域熱供給を効率よく
経済的なネットワーク化にできないかということから始まった。
これからは小規模なペレットバーナーが伸びていくと思われる。
理由は現在地域熱供給とネットワークでつなげない家がたくさんあるということ。
石油の価格が高騰していること。環境問題に対する議論が高まってきたことからだ。

<スウェーデンでは一般家庭がボイラーやストーブを導入する場合に補助金のような制度はあるのか>
コストの半分くらいが政府から補助金が出るので、他の化石燃料から比べると非常にコストは低く抑えられる。

<まきよりもペレットのほうがいい理由は>
スウェーデンではまきは非常に高く、ペレットストーブのほうが安くつく。
ペレットストーブは非常に快適である。ペレットストーブはペレットが自動的に補給されていく
仕組みになっているので手間もかからない。
コントロールパネルをつけており、きちんと燃焼を管理できるのでいつも快適で暖かい状態を維持できる。

<環境にやさしいと言うがダイオキシン類はでないのか>
スウェーデンでは小規模なもので使われているペレットは非常に純度の高いホワイトペレットを使っている。
このようなペレットを燃やしたときに出るガスは非常に少ない。
実際に測定もしているが二酸化炭素、一酸化炭素、窒素酸化物を測定しても
排出のレベルは低いので有害なガスの心配はない。

<ペレットの材料として針葉樹と広葉樹ではどちらがいいのか>
ペレットを作るときに針葉樹と広葉樹を混ぜているのでどちらがいいという違いはない。
木の種類で特に大きな違いは出てこない。1立方bあたりで多少違いはあるのかもしれないが
実際に燃やしてしまうときのエネルギー量を考えると違いはない。
樹種の違いより、皮の部分か幹の部分かの違いのほうが大きい。
スウェーデンでは小規模なプラントではバークペレットは使わない。
カロリー的には大きいが灰の量が少し多い。3,4年前よりロシアからの輸入材が多くなり、
その樹皮を使うと硫黄分などが多くつく場合がある。

<世田米保育園のボイラーはスウェーデンと比べるとどのレベルにあるのか。
あるいは改善すべきところがあるのか。
保育園は床面積が760uだが、お二方の製品の場合には何kwのボイラーまたはバーナーを供給するか>

実際に炉の中の炎の状態を見る限りではいい状態だと思う。
ペレットバーナーやペレットストーブを設置するときはお客様がどのくらいの容量が
必要かということでエネルギー消費量を計算しなければならない。
これはいろいろな要素がからんでくる。例えば窓の個数、設置場所、建物の構造、
断熱のシステム、平均気温なども考慮しなければならない。
いろいろな要素をかね合わせて計算しないとすぐにこの場合だと答えられない。

<一般家庭では灰はどのように処理しているのか>

スウェーデンでは庭にまいてくださいと勧めている。
一般の家庭でも庭が広く、1,000uほどあるからだ。その観点からも純粋なペレットを使って
もらったほうが土に返すときもいい。
大規模になると処理方法が違ってくる。地域熱供給をしているところから出るものは
かなり量も多くなるので、工場の所有者が廃棄物として処理をしなければならない。
その場合コストが1トンあたり200から250ドルくらいかかる。

<小型の家庭用でもペレットよりチップのほうが安く供給できるのではないか。
チップの燃焼機や使い方について教えていただきたい>

ペレットは燃焼も簡単にでき、扱いも楽で灰も少ない。
個人の家に導入するのは非常に便利なもので、ガスなどを使うものとほとんど変わらない。
湿ったチップを使って同じようなクリーンな燃焼を得るためには、ボイラープラントの中で
最初に余熱で乾かし、燃焼しやすい状態にすることだ。ここで含水率が15%から20%になるまで
十分に乾かしてから燃焼に送り出す。熱量など必要に応じて考えれば学校、病院、
小規模な地域熱供給、一般の家庭、アパートでも使える。

5. 2人からのメッセージ

<ヨーゲン・ニーセル>
若い人にいろいろなことをしていただきたいと思う。若い世代の意見も聞いていきたいと思うし、
将来家族を持ってエネルギーを選ぶときになってぜひペレットのことを考えてもらえればいい。
いろいろなことを若い世代に伝え、新しい技術の開発にもつなげ、ペレットを使って暖房するような
ものがますます広まっていけばいいと願っている。

<マッツ・グランストランド>
スウェーデンはある意味では幸運だったのかもしれないと思っている。
20年30年にわたって実際に廃棄物にしていたものを使うという伝統を持っていたという点からだ。
私たちもいろいろなことをこの長い間を学んできて、またたくさんの間違いもしてきたと思う。
しかしそこからさまざまな可能性を学ぶことができた。もちろん私たちが過去に犯したような過ちを
繰り返していただきたくはないが、過ちを犯すことを恐れないでいろいろな機会を
捉えていくことも大事なのでないかと思う。

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