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燃料


《木質燃料の種類》  一口に、木質系バイオマス燃料といっても多種にわたる。さらに樹種ごとにわけると、千差万別になる。おおまかに分類し、その特徴を挙げてみた。 ※1MJ=240kcal=280KWh、提供:イングベ・ルンドベルグ氏

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【林地残材】

 伐採現場に残された伐根や材を、きれいに細かくした。

水分50%での有効熱量8.4MJ/kg(2016kcal)▽含水率45〜55%▽灰分率2−5%▽大きさ 150ミリ以上1〜2%、5ミリ以下20〜30%▽石油換算容積 石油1?に対して12〜14? 

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【木材チップ】

 硬木を寸断したチップの場合、水分45%での有効熱量9.0MJ/kg(2140kcal)。

含水率30〜50%▽灰分率 約1%▽大きさ100ミリ以上1%、5ミリ以下10%▽石油換算容積 石油1?に対して10〜12?

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【樹皮、おが屑】
製材所からの副産物。

水分55%での有効熱量7.3MJ/kg(1752kcal)。

含水率45〜60%▽灰分率 1〜3%▽大きさ 樹皮は0〜100ミリ、5ミリ以下20%▽石油換算容積 石油1?に対して18〜20?

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【泥炭片】

 水分35%での有効熱量13.4MJ/ kg(3216kcal)。

含水率35〜50%▽灰分率 1〜10%▽大きさ 直径50×100ミリ 機械による▽石油換算容積 石油1?に対して6〜7?

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【泥炭細片】

 水分50%を含む有効熱量9.8MJ/kg(2352kcal)。

含水率 約50%▽灰分率 1〜10%▽大きさ10〜15ミリ未満▽石油換算容積 石油1?に対して10〜11?

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【未処理の樹皮】


製材所からの副産物。水分60%を含む

有効熱量6.2MJ/kg(1488kcal)。含水率40〜60%▽灰分1〜3%▽大きさ 0〜40ミリ▽石油換算容積 石油1?に対して18〜20?

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【ブリケット】

 工場で生産される燃料。寸断され圧縮された廃材。有効熱量17MJ/kg(4080kcal)。

含水率8〜12%▽灰分率 1%未満▽大きさ 機械による▽石油換算容積 石油1?に対して約3.5?

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【ペレット】

 工場で生産される燃料。粉砕し乾燥された廃材あるいは、林業副産物。有効熱量15.9MJ/kg(3816kcal)[1]。

含水率10〜15%▽灰分率 1〜2%[2]▽大きさ 機械による▽石油換算容積 石油1?に対して、約3.5?

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【ペレット】

 工場で生産される燃料。粉砕し乾燥された廃材あるいは、林業副産物。有効熱量15.9MJ/kg(3816kcal)[1]。

含水率10〜15%▽灰分率 1〜2%[2]▽大きさ 機械による▽石油換算容積 石油1?に対して、約3.5?

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【炭】
木を蒸し焼きにした燃料。有効熱量33.5MJ/kg(8000kcal)

含水率0〜3%▽灰分率 1〜2%[2]▽大きさ 製品による▽石油換算容積 石油1?に対して、約1.5?

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日本で出された資料でみると、下のような表になる。木質の場合、乾燥度合い、あるいは固形化によって異なることがわかる。

種別

電力(kWh)

重油1gを1として必要な量を指数化

備考

重油g

1.0000

 

灯油g

9.5

1.0526

 

天然ガス?

10.4

0.9615

 

27.9

0.3584

 

木材@kg

4.3

2.3256

数年間天然乾燥(含水率18%)

木材Akg

3.4

2.9412

一夏天然乾燥(含水率

木材Bkg

2.8

3.5714

伐採直後(含水率67%)

木材Ckg

1.6

6.2500

伐採直後(含水率150%)

ペレットkg

4.6

2.1739

 

(数値資料:「森のバイオマスエネルギー」(全国林業改良普及協会)より)



《燃料別のコスト比較》



では、単純な単位発熱量当たりのコストはどうなっているのか。スウェーデンの場合、「北欧のエネルギーデモクラシー」(飯田哲也著、新評論)に掲載されているグラフを参考にすると、100kWhを発電するのに、課税前では重油は7.9クローナ(94.8円)で、バイオマスでは10.9クローナ(130.8円)とバイオマスが37.9%高い。
もっとも、ウルフ・ヨンソンが持参した資料[3]では、kWh当たりの燃料価格(緑色の部分)は、石炭5.8▽石油20▽プロパンガス28.9▽天然ガス22.1▽泥炭6.0▽木質バイオマス6.0とバイオマスの価格は低い。
 ヨーロッパでもフィンランドの例でみると、発熱・給湯では、MWh当たり石油107フィンランドマルカ(1926円=1.9 円/kWh)▽天然ガス97FIM(1746円=1.7円/kWh)▽重油92FIM(1656円=1.7円/kWh)▽チップ127FIM(2286円=2.3円/kWh)。発電コストでは、原子力174FIM(3132円=3.1円/kWh)▽天然ガス180FIM(3240円=3.2円/kWh)▽石炭167FIM(3006円=3.0円/kWh)▽バイオマス285FIM(5130円=5.1円/kWh)とバイオマスが割高になっている。
一方デンマークでも、ペレットやチップ、ワラといったバイオマスの燃料価格は、石油、天然ガス、石炭よりかなり割高になっているのがわかる。

《まとめ》

1.木質系燃料の種類について

@林地残材A木材チップB樹皮、おが粉CブリケットDペレット
の他薪、炭などがある。それぞれの特徴があり、いずれも硫黄酸化物など化石燃料に特有の大気汚染源は極めて少ない。加工度合いによって発熱量は上がるが、重油1gと同じカロリーを生み出そうとすれば、量そのものは増やさねばならない。
なかでもペレットは、加工度合いが高いため、運送などに適しカロリーも高い。半面、加工費などコストもかかり、工場製品なので輸送費も考慮にいれないといけない。

2.含水率について
 発熱量を生み出すためには、木質バイオマスに特有の水分を減らさないと効率が上がらない。

3.ペレット生産と流通システムについて
昭和50年代からペレット生産ははじまっているが、結果として利用されなくなった理由として

@ 化石燃料の代替燃料としかみなされず、石油価格の急激な下落で消費者側が石油に戻ってしまった。また生産者側も価格競争に追いつけなかった。
A 燃焼器の十分な技術的成熟がないままで、信頼を保てなかった。
B 地域燃料として考えるべきで、地域ごとの生産拠点がないと流通しずらい。
4.チップに関して
 含水率が季節によって変わるため、チップ化の前に屋外保管して乾燥する必要がある。フィンランドでは、含水率は夏がもっとも低く、熱供給需要のピークにあたる冬は最高になる。また、有効発熱量が石油に比べ低く、結果として石油よりも輸送費がかさむ。乾燥→圧力→エネルギー密度を高くする必要がある。
わずかな硫黄分も排出されるが、脱硫装置は、石油よりはるかに簡単で安価である。また、石炭やピートと混焼することで、塩素化合物を減少できるなど、効果は高い。

5.コストに関して
 先進地でも石油などに比べ、バイオマス燃料は一般に割高になっている。これをカバーする施策は、重要な視点になる。


《補足》

木質燃料と石油量石炭、液化天然ガス(メタン)等の化石燃料とを比較し、その特質を述べれば以下の通りである.
@化石資源は再生産できないが、木質バイオマス資源は再生産可能である。
A大気中の二酸化炭素を固定する。
B燃焼による二酸化炭素排出量を抑制することができる。木材の発熱量当たりの二酸化炭素排出量は、石炭よりもはるかに少なく、木質バイオマスは石炭に比べはるかに地球温暖化防止に貢献する資源である。また、二酸化炭素排出量は、石油と同等であり、メタンと比べるとやや多い。しかしながら、燃料として用いた樹木が伐採された後、後継樹が育っているならば、大気中に排出された二酸化炭素は、再び樹木に吸収され、実質的な二酸化炭素排出量は変わらないことになる。したがって、二酸化炭素排出量の点からは、化石燃料よりも、木質燃料のほうが優れているといえる。
C燃焼による硫黄酸化物の発生量が少ない。木材中に含まれる硫黄の量はきわめて少ないので、燃焼による硫黄酸化物の発生が少ない(Easterly and Burnham 1996)。
D燃焼による窒素酸化物の発生が少ない木材中に含まれる窒素の量は少なく、また燃焼温度が低いので、燃焼による窒素酸化物の発生が少ない(Easterly and Burnham 1996)。
E木材は石炭などの固体燃料に比べ揮発分が多く灰分量が少ない。木材の揮発分は70〜80%程度もあり、灰分は通常1%かそれ以下である(林業試験場編 1963;熊崎 2000)。
F化石燃料に比べ、単位重量および単位容積当たりの発熱量が小さい。木材の発熱量は、4つの燃料中最も低く、メタンの37%に過ぎない。発熱量は、炭素原子数に対する酸素原子数の比が一定ならば、酸素原子数の多いほど大きく、炭素原子数に対する水素原子数の比が一定ならば、酸素原子数の少ないほど大きい(今村 1983)。また、固体、液体、気体の順に発熱量は大きい。表に示すように、木材は化石燃料に比べ、酸素が多く、炭素が少ないこと、また固体であることから、木材の単位重量当たりの発熱量は化石燃料に比べ、小さい。また、かさ比重が小さく、かさばるので単位体積当たりの発熱量は石油などの液体燃料に比べはるかに小さい。

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[1]ここでのペレットは、針葉樹の木部を指す。日本では、葛巻林業で主に燃料用として生産しているのは、スギや広葉樹の樹皮で、熱量や灰分などは異なる。



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