ホームへ戻る

小規模熱供給・地域熱供給システム


 ヴェクショー市の木質バイオマスも、実はほんの小さい学校を中心にしたところからはじまった。第4章では、ヴェクショー市の姿を解説するとともに、岩手で住田町の取り組み(左写真参照)などを紹介する。もっともページ数を割いた章になる。そのほんの一部ですが…。
2001年1月、澤辺攻・岩手大農学部教授(木質加工)を団長とするミッションは、ヴェクショー市の歓待を受けて、この小規模熱供給システムをつぶさに見ることができた。以下は、その報告だ。


Braas小規模地域熱供給プラントの視察

 伐採跡地の西方20kmに位置するBraasの小規模地域熱供給プラントを視察した。
ここはVaxjoEnergy社の4施設の1つで、3.5MW木質ボイラーと9MWの石油ボイラーを備え、通常は木質ボイラーを利用し、厳冬期のエネルギー不足の折り石油ボイラーも稼働する方式を採用している。燃料は製材廃材(鋸ぐず、チップ:400m3を常に在庫)が主でそれに地域から排出される生活廃材も使用している。後者の利用については分別装置をも備えてその資源化に万全のシステムを採用していた。

 Braas小規模地域熱供給プラント

 3.5MWの木質ボイラーは、既設の石油ボイラー2機による地域温熱供給システムに追加する形で1999年に設置され、燃料消費量は5m3/h、年間18,000MWhのエネルギーを供給している。
結果的に全エネルギー供給量の85%が木質、残り15%が石油となっている。温水の供給範囲は7kmに及び、全供給量の60%がBraasにある自動車関連2工場に、残り40%が地域住宅(50軒、32集合住宅を含む)の割合である。

写真1外観 写真2 ボイラー内部

 ここで、3.5MWの木質ボイラーから年間18,000MWhのエネルギーを生み出すため
には、木質燃料の消費を5m3/hとして単純に計算すると、年間26,000m3の鋸屑やチ
ップが必要になる。これだけの量を排出するためには、製材原木を少なくとも
170,000m3消費する製材工場が周辺に存在しなければならない。スウェーデンのこの
地方は林業および木材工業が主要な産業であり、豊富な木材資源と大規模な製材工場
が立地していることを背景として成り立つと想像できる。しかし岩手県の林業、木材
産業はいずれも小規模分散的であるが、それらを纏めるとかなりの量を収集できる可
能性がある。したがって廃材の集荷システムを構築することによって同様なプラント
建設が可能になるとも考えられる。

《まとめ》

1.施設に関して
ヴェクショー周辺の小規模熱供給システムを見る限り、次ようなまとめができる。

@ 公的施設など人が集まる場所を考える
学校など公的な施設を燃焼部の中心に据え、周辺に供給するシステムが効果的である。
A補助ボイラーの重要性
常時、木質ペレットを燃料にするが、極寒の場合は石油ボイラーで補助すると効率的である。
B燃料を考える
施設を動かす場合、プラントそのものの燃料を考えることが重要。製材廃材にするのか、ペレットだけでか、ほかの廃棄物を入れるのか。その点でブラアスの事例は興味深い。

2.ペレットバーナーに関して
・さまざまな種類があり、応用が可能。電圧の違いは克服できるとのことで、今後交流を続ければ道は広がる可能性が大きい。
・燃料に関して、いずれも日本で使用されている樹皮(バーク)ペレットに難色を示している。これは、灰分が樹皮の場合は高いので不安視している。この点に関しては、検討課題である。(後章で検討)
なお、日本総合研究所の飯田哲也主任研究員は地域熱供給に関して、次のように
スウェーデンと日本の比較のうえ阻害要因を述べている[1]。

技術的要因
@熱媒の種類と温度レベル
スウェーデンでは、温水がほとんどなのに対し、日本の場合は蒸気が多い。これは主としてスゥエーデンが広域型なのに対し、日本の場合は集中型の熱供給となっているためであろう。また、温水による熱供給の場合、日本に比べスウェーデンでは温水の供給温度が比較的高温であること、及び、戻り温度を低くし温水の往復の温度差を大きく採っていることに特徴がある。これも広域型と集中型の違いに起因する。広域型で温水をかなり遠方まで輸送するため、この温度差を以下に大きく採って配管の口径を小さくするかが重要なスタディ項目となっている。
A熱需要密度
熱輸送密度は、ほぼ同等、比熱需要は圧倒的にスゥエーデンの方が大きい。これは主として気候の影響であろう。北海道と比べるとその影響が明らかである。
B熱供給設備
スゥエーデンではバイオマスを用いたボイラーあるいは、コージェネレーションが多いのに対し、日本の場合はほとんどが天然ガスを中心とした化石燃料ボイラーあるいはコージェネレーションが多い。

(第4章の以下は省略します)

--------------------------------------------------------------------------------

[1]「地球温暖化対策推進のための自然エネルギー有効利用調査報告書」2000年3月、鞄本総合研究所




ホームへ戻る