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岩手型木質バイオマス利用の提言


提言書の骨格をなす部分で、はじめに当会の設立趣旨を振り返る。さらに、2001年1月、澤辺攻・岩手大農学部教授らが提言した内容を掲載し、ボイラーに関する重大な指摘を専門家からいただいた。その上で、会として「岩手型」で木質バイオマス利用に関する提言をした。
岩手は、熱の利用が大きく、冬期の石油利用が二酸化炭素排出量を押し上げている。盛岡市は全国主要都市の二酸化炭素排出量ワースト5なのだ。

《岩手型木質バイオマス利用の提言》



1. 社会政策

@産業界と一般市民を巻きこむような、円卓会議の開催。
講演会や審議会、フォーラムといった形式ではなく、互いがメリットを引き出せるような会議を設営する。最初は互いの情報提供を呼びかけ、次第に施策を論じ合える場とする。行政の役割は、補助金や助成金の説明といった場合もあるが、ほとんどはコーヒーを出すだけにとどめる。

A環境型ベンチャービジネスの育成。
ヴェクショー市は、大学と企業グループが連携し、環境保全や創出のベンチャービジネスが次々生まれている。幸い、岩手大学を中心とした「INS」の活動は有名なのに加え、岩手県の起業家育成システムは全国でも有数と言われている。岩手県立大も連携し、新たな“環境シリコンバレー”を作り出す。このなかで、木質を使ったDMEやガス化など、バイオマスを活かしたエネルギー部門の育成を図る。

B住宅建設の際、「岩手型環境住宅」を進め、熱効率や地元産の木材使用に応じて割り増しなど優遇策を盛り込む。
現在検討中の「環境共生住宅」の観点に、
・運搬のための二酸化炭素排出と木質利用促進の視点から、地元産材の利用を進める。
・省エネルギーや空気流動、熱効率アップなどの視点から、ポイント制で助成額を変える。
・木質ペレットやチッッピングボイラーなど、暖房の熱源に木質バイオマスを活用する設計に対して、一時的な補助策を検討する。
・改築などで熱源を石油・電気から木質バイオマス(チップ利用を含む)に変更する場合も同様に、低利融資など補助策を検討する。

C住宅設備に関して、木質バイオマスを利用できる機器を開発できるよう、各種補助策、助成策を検討する。
・床暖房やセントラルヒーティングなどを開発する場合、低利融資などを検討する。

D具体的な二酸化炭素削減のための、ローカルアジェンダを作成する。
・部門別の二酸化炭素排出のモニタリングなどを主要市街地で実施する。
・県として、市町村のローカルアジェンダ作成に推進・協力する。
・特に公共施設など、できるところは木質バイオマスの利用を掲げる。
・公共施設を中心として、小規模熱供給システムのモデル地区を設定する。

E環境政策に詳しいNGOやNPOと協力して、コーディネーターを育成する。
・円卓会議でのコーディネイトを主軸に、活動する。

F健康・福祉
・環境関係の施設を新設する場合には、木質バイオマス燃料をはじめとする、再生可能なエネルギーを使う設備を暖房・給湯などで設置義務とする。

G木質ペレット生産や、機器生産ラインの新設に助成策を検討する。
・地域型のエネルギーとして定着するため、初期投資の負担を軽減する。

H原材料収集に際し、各種情報の開示と回収システムの構築。
・製材工場側はストックについてインターネットなどで公表する。
・林地残材を回収する、有効な施業システムを構築する。
・保育間伐期の「切り捨て間伐材」の回収をどうするのか、検討する。

Iすぐに使えるチッピングボイラーの創設・転換を支援する。
・チップの価格は、熱量換算しても重油より安価で豊富。しかも低質材の活用という、循環型社会にマッチした考え方である。住宅の品質確保に関する法律で乾燥機が必要な製材所など施設に設置する、あるいは共同で設置する場合、重油ではなくチッピングボイラーを進める。

2.地域熱供給

@モデル地区の設定。
・当初は公共施設や製材工場を中心とした小規模なモデル地区を設定し、フレキシブルチューブで接続し運営する。その際には、チップやペレット、ブリケットなど多様なあり方を検討する。(例えば、遠野市の木造市営住宅団地など)
・老人福祉施設や、保育所などでのボイラー導入。

A熱交換器の開発。
・屋外から熱供給を受ける場合、熱交換器が必要になる。スウェーデンでは小型の熱交換器があり、同様の小型交換器を検討する。

B配管の検討。
・日本とスウェーデンなどヨーロッパでは配管方式と材質が異なる。簡易的に設置できるものを検討する。

Cバークペレットでも使用できるバーナー、ボイラーの開発。(補足参照)

D製材所での焼却炉廃止とボイラー式乾燥機の設置促進。
・ダイオキシン廃止により、製材工場で焼却炉は廃止される。同時に乾燥機の設置も急務であり、双方の兼ね合いから木質を燃やす「木だきボイラー」と蒸気乾燥機を設置するよう、進める。
・“捨てる”廃材を活用し、自動供給できるようなチッピングボイラーの導入を進める。

3.発電・コージェネレーション

@石炭火力発電所での木質バイオマスとの混焼を推進。
・飛躍的に二酸化炭素が減少する。

Aガス化の開発よりも、より実証的なバイオマスプラントを検討する。
・費用対効果を考えれば、小規模熱供給団地あるいは、工業団地のような一定エリアで一定の熱と電気が常時必要なところを対象にシュミレーションする必要がある。
・配管の検討。
・工業団地などでは、ボイラー・蒸気タービン技術によるCHP(Combined Heat and Power)方式で検討する。

B単発的に大規模施設の建設に着手するのではなく、小規模ボイラー技術によるDHS(District Heating System)が成功してから段階的に踏み出す。

C岩手県で豊富な、チップを活用した小型施設を検討する。

4.家庭用ストーブ

@岩手型のストーブ開発を手がける。
・南部鉄器の伝統を生かし、遠赤外線などを利用できるようなストーブを検討する。
・ファンヒータ−式で、強制排気ができるために煙突が短くて済むような機器の開発を検討する。

A当面は、スウェーデンとの交流を促進する。
・技術的に確立されたものもあるスゥエーデン製の輸入や提携を進める。

B普及促進
・セントラルヒーティングなど高額な設備だと普及も難しい。木質バイオマスを理解しやすいストーブなどで、普及を図る。

C燃焼機器の認証機関を設定する。
・消費者に安心感を持ってもらう。


5.燃料

@生産拠点を各所に設ける。
・林業関係者だけではなく、建設業などからの参入もしやすい環境づくり。あるいは協同型の推進。
・生産拠点の距離は、50〜100`圏内で1つの割合がコスト的にも見合う。
・原材料の収集ができるような、製材工場、森林組合との連携の模索。

Aペレットの材質管理
・バークペレット、木部ペレットともに粉砕率の設定など、品質の自主管理基準を設ける。

Bプロパンガス販売網に近い販売網の充実化
・消費者宅に直接販売できるよう、販売店を確保する。

Cチップ活用の道を進める。
・木質チップはこれまで製紙原料として県内で数十万トン規模が供給されている。
・製紙原料としての国内チップは、需要が急激に拡大する見込みはなく、供給体制は残っている。
・製紙原料として現在最高の価格水準で計算しても、木質チップの熱量単価は重油を下回る。
・木質チップの燃焼炉ボイラーは、チップの含水率が150%でも安定して稼動出来るものが輸入可能な状況にある。
・チップになる低質材が売れなければ、森林を中心に回っている産業が衰退の一途をたどる。以上の理由から、「岩手」が取り組むべき課題のひとつは、実は、チップの需要拡大であり、その唯一迅速に対応出来得る方法が、公共施設で重油の代わりに「チップヒーティング」を使うことと考える。取り組みやすく、安定しているため、木質バイオマスの利用推進の柱として進めることができる。

6.林地残材

@効率的な集材、回収方法の検討。
・一義的には、土場での末木枝条利用となるが、圧縮運搬・チッパ−利用など土場から加工現場までの運搬方法を検討する。
・現在、チェンソーでの造材が主流だが、バイオマス利用を考えれば、形態を検討して促進する必要がある。
・路網の整備を進める。

A間伐材の利用検討。
・保育間伐期の小径木の取扱いを検討する。

Bダム流木なども検討対象とする。

7.その他

@ 普及活動
・環境展など、メッセに出品、トラックキャラバンで中山間地域を回り小展示会を開く。

A情報共有の場
・協会などを新たに設置し、情報のストックを進める。



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