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スウェーデン派遣・二戸調査事業報告会

日時:2002年3月22日(金)18:00〜20:30
場所:県公会堂
主催:岩手・木質バイオマス研究会  JETRO盛岡貿易情報センター
出席者:岩手・木質バイオマス研究会員等37名


深澤光(岩手県林業技術センター)
「チップボイラー導入に向けた現地調査報告」


◆背景
これまでのスウェーデン ベクショー市等との交流により、木質バイオマスエネルギー利用を実現するためには、
木質チップの利用が当面の重要課題であると判断された。
2002年度には林業技術センターにチップボイラーの導入を予定している。

◆目的
@木質チップのエネルギー(暖房・給湯用熱)利用を中心とした調査
Aベクショー市関係者との意見交換による協力関係の強化

◆チップボイラーがなぜ必要なのか
・割合として見た場合、チップは加工コストがかからないが原料費が約8割を占めている。
使われれば木材需要につながるのではないか。
・間伐材の多くの部分が土場や道端に捨てられている。パルプ材は採算割れのため利用されない。
これらをチップ化し、燃料として使えないか。

◆スウェーデンでは木を捨てない
平坦な地形に徹底した機械化で収穫費用をおさえている。パルプ材の価格を収穫費用が大きく下回っている。

◆ソドラ(森林所有者組合)の経営に見るスウェーデンの林産業
年間原木消費量…13,000千m3
主な製品年間生産量…製材品=1,600千m3   パルプ=7,400千m3   燃料材=400千m3
燃料材は用材の1/100の価格のため原木消費の3%に過ぎず、副次生産物である。
林業・林産業自体がしっかりしていなければ燃料材は収穫できない。

◆チップ生産
・1年間乾燥させて葉を落とした枝、末木まで徹底利用。林内で移動式チッパを使用。120m3/人・日の生産量。
・製材工場で製紙用パルプ規格外のものを移動式チッパでチップ化。1.5円/kwhでオガ粉やバークがボイラー燃料として取引されている。
・スウェーデンでは約20年前からチップボイラー利用は木材乾燥から始まり、それが競争力の一要因となっている。

◆ チップ等ボイラーの使用事例
地域熱供給の事例…3500kw、1000kw。
小規模熱供給の事例…350kw。コンテナタイプ。
個人住宅での事例…21kw。

◆チップボイラーの構造(ヤーンフォーセン社製)
燃焼炉とボイラー(熱交換部)が一体となった「インテグラルタイプ」と分離している「プレファーナスタイプ」がある。
前者は含水率が10〜120%のチップが使用でき、後者は比較的高い40〜150%ものも使用できる。
燃焼炉の床を空気を送りながら動かすことで湿った燃料を乾燥・燃焼させる。

◆安全装置
逆火を防ぐ。温度センサーにより警報発信・放水・燃料の遮断等、2重3重の対策をしている。

◆煙管清掃装置
ブラシが自動で往復するものや、振動を利用したシステムがある。

◆サイロ
広い面積から効率的にチップを集めるために振り子型の「ペンダルスクリュータイプ」、
楔形ブレードでかき集める「スクレーパータイプ」の2通りの供給装置がある。

◆今回の調査のもう一つの成果
ベクショー関係者に岩手の実情・課題を明確に伝えることができ、今後の協力関係を深めていくことも確認できた。

◆今後のチップボイラー普及の展開
2002年度に林業技術センターに試験導入。2003年度には県や市町村の施設に導入。
それ以後は技術提携により国産化し民間の工場等に設置できればと考えている。


伊藤幸男(岩手大学農学部)
「二戸地域における木質バイオマス利用の可能性」


◆背景
@バーク処理の困難化(ダイオキシン類対策特別措置法等による)
A間伐の停滞と未利用
B「木材乾燥センター」の熱源としての期待

◆目的
@二戸地域で発生する木質バイオマス資源の実態把握
Aその有効活用の可能性
B事業化に向けた基礎的調査・検証
C利用推進のためのソフト

◆森林資源の特徴
所有形態…民有林が約9割。
樹種構成アカマツ(22%)、広葉樹(49%)のウェイトが高くスギが少ない。
齢級構成…9齢級(41〜45年生)までが多く、間伐段階にある。

◆素材の生産と流通
1990年から1999年の間に生産量、流通量ともに半分以下に減少。素材生産の半分を占
めていた広葉樹チップの急減が影響している。需要先は大規模生産の工場にシフト。
素材の移出入が大きく、地域の資源と地域製材加工業とが密接な関係で結ばれながら
展開していない。

◆バーク等の発生量
バーク…8,560t/年。処理は堆肥業者に無償でもしくは費用を払って引き取ってもらっている。
オガ粉…4,558t/年。処理は敷料業者に2,000〜3,000円/tで販売。

◆ペレット需要の実態
スイミングスクール、水耕栽培での100〜200t/年のみ。

◆地域需要の可能性
・バークは燃料利用として有望だが、処理しきれないほどの量がでる。
ペレット工場を建設したとしても現状では1/10しか需要量がない。需要開拓が課題。
・オガ粉はブロイラーの敷料として非常に需要がある。足りないほど。
・ペレットは金田一温泉をはじめとする宿泊施設への導入の可能性。
・ハウス、ガラス室などの農業施設への導入も可能だが、対象となる加温施設が少ない。
・一般家庭への導入は一戸あたり1tのペレット需要が見込める。
・構想されている木材乾燥施設へ導入された場合、ペレットでは1,000t/年以上の
大口の需要先となる。チップボイラーの導入を視野に入れてもよい。

◆具体化に向けて
生活、環境、産業の分野に目標と効果が設定され、これらが横断的に結ばれていると
ころに木質バイオマスは位置づいている。産業面だけではなく生活・環境面も豊かに
していかなければ定着しない。

◆利用可能な木質バイオマス原料
バーク…量が確保されており製材工場で集荷しやすい。利用可能性は非常に高い。
オガ粉…敷料等への需要が高く、現状では燃料に利用する必要はない。
間伐材…伐出システム等を改善、開発した上で利用を考える必要がある。
広葉樹…他用途利用を通じてできる限り高付加価値化していくことが望まれる。

◆木質バイオマス利用のシナリオ
第T期(初動期)…バークを原料とし公共施設を中心にペレットボイラー、ペレットストーブを導入する。
第U期(拡大期)…バークや間伐材、広葉樹を原料とし事業所や一般家庭へボイラーやストーブの需要を拡大する。
第V期(定着期)…需要を一般化し、バイオマス発電も視野に入れる。

◆木質バイオマス利用の推進
地域の様々な組織や主体を横断的かつ重層的に統合する中間的組織が必要である。
スムーズな展開が期待できる。

◆中間的組織「カシオペア・バイオリージョン」(仮称)の役割
いろいろな主体に対し、包括的な対応をする。普及、教育、技術面、政策の支援を
し、各団体との連携や情報交換を行う。


質疑応答

Q:木質バイオマス資源の収穫コストはどのくらいか。
A:具体的にはどの程度かは分からないが、日本で行うには全木で土場まで集材しプ
ロセッサ等で枝をはらい、収穫するのが最も低コストだと考えている。間伐の場合は
列状間伐による全木の架線集材がよいのではないか。

Q:1年間林地に枝条を放置しても含水率は100%程度か。
A:そのくらいだが含水率は木質バイオマスではあまり関係ない。熱量単位で取引さ
れる(1.5円/kwh)。

Q:スギバークペレットと広葉樹バークペレットの価格は違うのか。
A:スギバークが少し高くなる。乾燥速度が遅れるので乾燥機のポテンシャルを上げ
なければならない。固まりにくいこともある。

Q:ペレット燃焼機を導入する際に他の燃料機器と比べ、メリットがあればよいと思
うがいいアイディアはないか。
A:現時点では民間に導入するには政策的な補助がないと難しい。

Q:灰の処理はどのようにしているのか。
A:スウェーデンでは庭にまくか産業廃棄物として処理している。二戸地域では肥料
としてタバコ農家に譲ったり、鶏糞と混ぜて業者に販売したりしている。酸性土壌の
中和剤として使うことも可能。