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木質バイオマスフォーラム2007  「動き出した みどりのエネルギー社会〜木質バイオマスと地域の未来〜」概要


2007年1月26日
於:盛岡市民文化ホール

 木質バイオマスフォーラム2007(主催:岩手県、盛岡市、岩手・木質バイオマス研究会)は2007年1月26日、盛岡市の市民文化センターで開き、木質バイオマスの"点"から"面"へ広げる地域の未来について語り合った。
 はじめに、主催者を代表して、谷藤裕明・盛岡市長が「4年前に青森、秋田、和歌山、青森、和歌山、高知、岩手の5県知事が一堂に会して『木質バイオマスサミット』を開催してから、その後毎年フォーラムとして開催している」と経過を説明。増田寛也・岩手県知事が「木質バイオマス利用で描く岩手の未来」と題して基調講演した。

会場

【税制優遇など支援施策も】増田知事基調講演
増田知事は「木質バイオマス利用には流通やデザイン、原材料としての林地残材の収穫確保など課題もあるが、今後10年間で普及からビジネスとして定着することが夢」と未来を語り、同時に「補助政策以外にも、優遇税制など行政として支援することが必要だ」とソフトタッチ施策に取り組む姿勢を示唆した。
続いて、サンポット株式会社代表取締役 坂内孝三氏▽NPO法人樹木・環境ネットワーク協会専務理事 澁澤寿一氏▽岩手県住田町長 多田欣一氏 の3人をパネラーとして、金沢滋・当研究会会長をコーディネーターにしてパネルディスカッションへ移った。


【地域には"人"が欠かせない】パネルディスカッション
パネルディスカッションで、坂内氏は、本社を埼玉県川越市から花巻市に移した経緯を説明。「サンポット社自体は石油暖房機器メーカーだが、環境問題の視点からもペレットストーブ開発に取り組んだ。しかし、昨年3月、燃焼灰から六価クロム溶出が検出されたことから、県工業技術センターや林業技術センターなど研究機関と四つになって対策に奔走した。行政の姿勢に驚き、感謝している。企業として地域とのつながりがより重要だと感じる」と指摘。将来的な展望として「欧州の国際的な暖房機器展示会では灯油系は極めて少数。木質バイオマス利用の給湯機器にも取り組み、将来は国際展示会に出展したい」と語った。
澁澤氏は、製材工場の集積地・岡山県真庭地区で1992年から企業経営者と真庭塾を開催し、近年はそこから木質バイオマスに取り組む会社2社が興り、真庭バイオマスツアーなども企画する。「循環型社会とは美しく聞こえるが、各段階で複数の出口をつくらないと回らない。真庭では木質バイオマスから発電やペレット、チップ、ネコ砂などを販売し、エタノール製造もやっている」と紹介。しかし、一部の人たちによる活動ではなく「地域内で相互のコミュニケーションを取り、みんなで考えた成果がバイオマスツアーだった。地域全体を経営する視点で取り組むことが大切」と指摘した。
多田氏は、人口約6800人の住田町で、町の補助政策を通じて各国のペレットストーブを導入している現状を説明。「先人が残した森林資源の有効活用と、地球温暖化防止の観点からいち早く取り組み、年内には町内で木質バイオマス発電も動きはじめる」と施策を述べた。しかし「やがて効果が現れると理解してもらうため、保育園にペレットボイラーを設置し、180人を雇用する木工団地でプレーナーくずのペレット製造を始めた。しかし、いつまでも町がリスクを抱えるわけにはいかない」と指摘。未来像として「やはり林地残材からペレットを製造し、地域経済が潤う姿」を挙げた。
最後に、コーディネーターの金沢会長は「"地域"を語るには"人"が欠かせない。次世代を育てる人、外からやってきて人と人をくっつける"人"、そして自分たちの地域を真剣に考える"人"。もう一度、人材について考える必要がある」とまとめ、締めくくりにメッセージを発信した。

【木質バイオマスフォーラム2007メッセージ】
私たちは、今日、木質バイオマス利用を通して自分たちが住む地域の未来の姿を思い描き、語り合いました。

思えば、初めて先進地のスウェーデン・ヴェクショー市の取り組みに接した当時は、6年後、このように多くの人たちが「木質バイオマス」という言葉を使う社会になるとは想像もつきませんでした。

岩手では、このスウェーデンとの交流に端を発し、その後のペレットストーブやチップボイラーの開発、燃焼機器の導入に加え、2004年の木質バイオマスサミットをはじめとするフォーラムの開催など、産・学・官による木質バイオマス利用への取り組みはしっかりと根付きつつあります。
また、岩手のこのような取り組みに相呼応して、全国的にも地球環境保全や温暖化防止という観点から、木材によるガス化発電やエタノール製造などに取り組む地域が現れ、「みどりのエネルギー」利用のベクトルはゆるぎないものとなっています。

一方、豊富な森林資源を抱える多くの地域は、厳しい経済状況の中にあります。これらの地域は、木質バイオマス利用が産業として育ってゆく可能性の高い地域であり、ビジネスとして再生可能でクリーンなエネルギーを提供していくことが求められています。そのためには、エネルギーとしての価格や安定的な供給、消費者への安全性の確保といった、多くの課題を乗り越えなくてはなりません。

本日のフォーラムを通じて語り合った未来の姿を実現するため、木質バイオマス利用に引き続き取り組んでいくことを参加者全員で確認し、「木質バイオマスフォーラム2007」のメッセージといたします。
2007年1月26日

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【増田知事の講演要旨】「木質バイオマス利用で描く岩手の未来」



 岩手県が北海道に次ぐ豊かな森林県でありその活用が重要なことを指摘。施策として@二酸化炭素排出削減目標を8%とし、木質バイオマス利用などで化石燃料を削減するA未利用な森林資源を有効活用することで林業・木材産業の振興を図るB木質バイオマスにかかわる燃焼機器開発や、燃料としてのペレット・チップの生産・流通で新しい雇用創出などで、地場産業の育成になる―ことに取り組んできた。
 もともと1998年に木質バイオマスの先進地、スウェーデン・ヴェクショー市の施策に接し、翌年に同国バイオマス協会長を招いて講演会を開いた。民間でも2000年には岩手・木質バイオマス研究会が発足し、2001年にペレットストーブ開発などを盛り込む提言書を受け、2004年には木質バイオマスサミットを開催するなど産学官で取り組んでいる。スウェーデンに「成功するためには小さい階段をのぼることが近道」ということわざがあるとおり、われわれは地域熱供給のような大規模施設の前に、ペレットストーブのような小さい階段をひとつずつ上がろうとした。

 これまでの道のりは地道ではあるが着実に進んだ。ペレットストーブの導入台数は今年度内に1,000台を超え、大きな階段を上がった。さらに保育園や老人保健施設に設置したペレットボイラーも34基、チップボイラーは14基に達し、今後伸びることが期待される。
 一方、課題もいくつかある。@木質ペレットの販売店も71ヶ所に増えたが、さらに木質ペレットの流通システム構築と購入しやすい低価格化A機器のデザインなど家庭で受け入れやすい導入促進Bチップを含めた木質バイオマスの環境価値を、評価する仕組みづくりC現在は製材所の残材を原材料にしているが、じきに不足する。森林の林地残材の利用Dビジネスとして成り立つモデルづくり―などがある。
 行政としても、これまでのような補助策だけではなく、税制上の優遇措置など条件整備を整えることや、地域金融機関の理解を得てすすめなげればいけない。また、バイオマスをつかった電力や熱をグリーン証書で評価するような優遇策もつくる必要がある。
 知事として12年やってきたが、10年前と今では大きく違う。これからの10年間でさらに大きく変わるだろう。過疎地域や農村地域では、有望な産業となる可能性を秘める木質バイオマスは、環境ビジネスとしても可能性は大きい。これまでの普及からビジネスとしての定着へ。岩手にはその可能性は大きいし、自然エネルギー利用がこれからの岩手の未来となるよう期待している。
以上



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