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木質バイオマスフォーラム2006 概要


木質バイオマスフォーラム2006 
「つくろう!みどりのエネルギー社会を」〜木質バイオマスの価値と負担〜
《開催報告》

岩手・木質バイオマス研究会
会長    金沢滋


 「つくろう!みどりのエネルギー社会を」をキーワードにした木質バイオマスフォーラム2006(岩手県、盛岡市、岩手・木質バイオマス研究会主催)が2006年1月20日、盛岡市のマリオス文化ホールで開かれた。
今年のテーマは「木質バイオマスの価値と負担」。全国から約500人が集まったパネルディスカッションの後、2分科会では木質バイオマスの規格や認証制度と、森林からバイオマスをどう運べるかで取り組みが紹介され、熱い議論を交わした。
 オープニングセレモニーで増田寛也・岩手県知事は主催者として「森林利用、ことにバイオマス利用をどのようなシステムで支えていくのか話し合い、次へのステップとしたい」とあいさつした。

【パネルディスカッション講師の皆様】
コーディネーター:泊みゆき氏(NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長)
 パネラー 
岩手県知事 増田寛也:行政のトップとして
西舘信一氏(日本燃焼機器検査協会理事):関係企業の現状や情勢
野澤日出夫氏(小岩井農牧株式会社代表取締役常務):森林に関わる立場として
笹尾俊明氏(岩手大学人文社会学部助教授):環境経済学の観点から

 パネルディスカッションでは、冒頭に金沢会長が「限られた関係者や業界の努力と認識だけでは、経済の仕組みの中に生き残っていけない。
消費者を含め多くの人が関わり、更に展開するためには何が必要か、どんな社会のシステムがあればよいか」と問題提起。

 コーディネーターの泊氏が世界的なバイオマス利用の行方のうち、経済活動としてメルセデスベンツの取り組みや、欧州での税体系などを説明。
さらに、手法としてエネルギーのグリーン調達的な考え方を示し「普及の壁である利用者を5%以上に増やすか」と問いかけた。
これに対し、パネラーの増田知事は「ペレットストーブのように目に見えてわかりやすい機器を開発した。
現在720台ほど売れているが、早く1000台を越し森林所有者へと還元することが大切。現在県内で好調の自動車産業は民の力でできているが、木質バイオマスの場合、地域の力で支えることが大切」「国は法整備をし、県は葛巻町のようなモデルを広めることができる。
しかし、価格の問題や安全性につながる規格・品質、流通の経路充実と課題はある」と指摘。

 西舘氏は「国として、二酸化炭素の排出量は京都議定書時以降増えており、すでに12〜14%程度の削減対策を講じなければならず、カーボンニュートラルな木質バイオマス利用は政策にも合致する」「約半世紀前、石油ストーブによる火災が相次ぎ検査協会ができた。
安全性の確保が第一。そして、さらに価値あるものにするには、林業・森林と結びつけることが必要」と機器開発と林業がむすびつく将来像を展望した。

 笹尾氏は「家電製品はトラブル発生時の責任を問われていたが、家電リサイクル法では環境に対するマイナス影響の点で利用者への負担がうたわれた。
森林と似ていて、環境を守る多面的機能を低下させないためには多くの国民の力が必要となる」「制度上、goodに補助、badに課税の考え方がある。
現段階ではバイオマスの競争力は低いので、補助は短期的であるべき。
リサイクル普及と似ていて、モデルケースをつくり使う側の市場を増やさないといけない」と補助と課税の制度的な視点を述べた。

 野澤氏は「小岩井農牧はもともと森林造成を手がけた。経験上、森林をきっちり管理することが前提だ。
収支からいえば収入はコストの半分もいかないが、100年間の中では一時期にしかすぎない」「森林所有者の93%は小面積の所有者。

これらをどうとりまとめるかが森林側の課題。使う側では、森林から材をうまく出して、利用する新たな仕組みづくりが不可欠」と現在の森林生産物の流通にはない、新たなシステムを段階的に実現するよう提言した。
最後に、今フォーラムの全体のメッセージとして、木質バイオマス利用をさらに進めていくために1)安心で安全であること 2)森林資源を捨てることなく有効に使うこと 3)利用することと生産することがつながること を特定の関係者だけではなく、利用者を含めた多くの人たちで取り組むことを訴えた。

※フォーラムで読み上げたメッセージは、下記の通り。
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木質バイオマスフォーラム2006 メッセージ
2004年1月、「みどりのエネルギーが日本を変える」をテーマに、5県の知事が岩手に集い、全国初となる「木質バイオマスサミット2004 inいわて」を開催した際に、宣言を発表しました。その宣言文にはこう書かれていました。
「木質バイオマス利用の重要性を改めて認識するとともに、これら関連産業を通して、地域経済の活性化と雇用の拡大を図ることを決意いたしました」

それから2年が経過し、木質バイオマスの認知度は確実に広まり、またペレットストーブ、ペレットボイラー、チップボイラーは着実に導入台数を伸ばしています。しかし、このような状況の中で新たな課題も明らかになってきています。
本日、私たちは改めて森林の木質バイオマスをうまく利用していくことが、循環型社会の形成にとても有用であることを学びました。同時に、それに関わる人たちだけではなく、社会全体で理解し、支えることも大切だと実感しました。
木質バイオマス利用をさらに進めていくためには
1) 安心で安全であること
2) 森林資源を捨てることなく有効に使うこと
3) 利用することと生産することがつながること
が必要です。
消費者を含めた多くの人たちが互いに手を携えて、前向きに課題に取り組み、力をあわせさらなる豊かな社会にする努力を惜しまないことを参加者全員で確認し、本日のメッセージといたします。         2006年1月20日

参考
事前告知
記事
岩手日報
盛岡タイムス
朝日新聞
岩手放送



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