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木質バイオマスフォーラム2006 現地視察(第3回木質バイオマス公開講座)


 葛巻町の取り組みとガス化発電の居間を知ろうと、木質バイオマスフォーラム2006現地視察(第3回木質バイオマス公開講座)は
2006年1月21日(土)、同町内で開いた。バス2台に乗車した約80人が自然エネルギーと福祉に取り組む同町の姿と、ガス化発電の施設などを視察した。
スケジュール:
盛岡駅西口マリオス前バスプール出発
→くずまき高原牧場プラトー(中村哲雄町長の葛巻町の自然エネルギーに関する施策説明▽月島機械による木質バイオマスガス化発電(直接ガス化方式)の説明、中外炉工業による木質バイオマスガス化発電(間接ガス化方式)の説明)
→畜糞バイオマスシステム視察
→介護老人保健施設アットホーム葛巻(ペレットボイラー、太陽光発電)
→ 森の館ウッディ(ペレットボイラー、ペレットストーブ)
→岩手沼宮内駅→盛岡駅

【中村哲雄町長の話】 
 葛巻町の人口は約9,000人、約3,000世帯に対し乳牛が1万3,000頭を越え、東北で一番の酪農地帯だ。
林業の特用林産物であるやまぶどうでワインを手がけ、その後の1999年6月に最初の3本の風車を建設し、
クリーンエネルギーにも積極的に取り組もうと「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町くずまき」というまちづくりを進めている。
 クリーンエネルギーへの取り組みは、風力・太陽光・畜産バイオマス発電により3,000世帯の葛巻町内で約1万7,000世帯分の電力を供給できる。
風力については、3基の風車を建設し、12本・2万1,000kWの発電施設となった。町立葛巻中学校の新築時(2000年)に、国のエコスクールの指定を受け、
建設費4,500万円の半額を国の補助でまかなう形で50kWの太陽光発電施設を設置した。
 また、畜産バイオマス発電も始めている。1万3,000頭の牛から毎日大量の排せつ物がから出るが、有効な資源として利用しようという発想から、
2003年6月、実験プラントをくずまき高原牧場に建設した。
牛の排せつ物200頭分と家庭からでる生ゴミ約1tを加え、合計14を処理しメタンガスを発生させ、爆発させて動力を生み出し発電している。
ここでは、メタンガスの精製、濃縮、圧縮、ボンベ注入化の研究も進め、近く、水素をとり出して燃料電池化する試験の結果としての商品化が期待される。
さらに、これから説明いただく木質バイオマスのガス化発電施設についても、地元では熱い期待が寄せられている。
 葛巻林業のことを話さねばならない。紙原料の木材チップ生産工場から出る樹皮をゼロエミッションの考え方で、木質ペレットを20年前から製造している。
クリーンエネルギーとして注目されている木質燃料を、葛巻では20年も前から生産していた。
現在ペレットストーブは県からも推奨されて、町内でも老人保健施設の暖房、給湯等で利用している。
 99年、葛巻町に存在するエネルギーのすべてを電力に変えようという内容の新エネルギービジョンを策定した。
発電所のほか、町民の薪ストーブ購入補助や、小中学校生といった若い世代にエネルギーや環境について理解を深めてもらうための出前講座も実施している。
 また、廃校を利用した自然エネルギー等について学ぶ場として、「森と風のがっこう」の活動も町内で進んでいる。
こうして振り返ると、畜産を一生懸命やっていたから風力発電や畜産バイオマス発電が、そして林業を一生懸命やっていたからペレット燃料生産が可能になった。
まさに葛巻の基幹産業がクリーンエネルギーの生産基地へと変わるだろう。
これからも理解をよろしくお願いします。


【月島機械株式会社】長瀬裕和氏
 木質バイオマスの利用には下記のような方法がある。
1. 直接燃焼方式  従来技術であり実績も多いが、発電効率が低く(約15%以下)、大型設備向き。熱回収だけを行う場合にも適している。
2. ペレット化(固形燃料化)取り扱いが容易で貯留性に優れるが、ペレット化したバイオマスの利用設備が必ず必要となる。
3. ガス化発電方式 発電効率が高く(20%以上)、小型設備では直接燃焼方式よりも圧倒的に有利だが、発生燃料ガス中のタール除去設備が必要となる。
4. 液化(エタノール化)液体に転換することで使用用途を広げることができるが、微生物を使用するため、運転条件管理は厳しい。
 これらのことから、当社では小規模向けでコジュネシステムが構築できるガス化発電方式に注目する。
 ガス化発電には固定床=ダウンドラフト式とアップドラフト式、流動床にはバブリング式と循環式がある。また、ロータリーキルン式の方式がある。当社のダウンドラフト式は、チップを「蒸し焼き(酸素不足)」にし、可燃性ガス(水素、一酸化炭素、メタン)を生成。そのガスは排ガス処理と熱回収を行い、ガスエンジンにて可燃性ガスを燃焼させ、電気と熱を発生する。発生した熱は温水(80℃)の形で外部にて有効利用できるシステムとしている。
 このため熱と電気で75%(発電24%、熱回収51%)の高いエネルギー効率を実現し、タールを低減することができた。また、排ガス処理を効率化することにより、排水処理をなくし経済性の高いシステムとなった。つまり、一日10トンの木質チップ(水分30%)から発電量350キロワット▽熱回収750キロワット(80度)ができることになる。
 これら発電した電気は近隣の施設に送電している。


【中外炉工業株式会社】水谷知樹氏
 NEDO 平成14年度バイオマス未活用エネルギー実証試験事業により、山口県内にガス化発電施設を設置した。山口県から間伐材チップの提供を受け、企業組合の製材工場に熱と電気を供給している。
 直接ガス化方式は炉に少量の空気を入れていぶすが、間接ガス化方式は、炉に空気を入れず外部から熱することにより、高い発熱量のガスを得ることができた。反応筒内を原料が転がりながらガス化されるため、原料の形状や種類は問わない。ガス化炉から出る炭化物をガス化熱源とするため、ガス化後の残さは灰しか残らない。実験炉は、処理可能量は公称 一日5トン(実処理可能量〜14t/日)で発電量:180キロワット(エンジン能力)、ガス化能力は最大500キロワットとなった。
 また、加熱温度により生成するガスも異なり、850度では灰1%、ガス99%▽700度では炭素14%灰1%、ガス85%▽700度以下では炭素が主に生成される。ガスの成分も異なる。例えば、850度ではH2 48%▽CO: 26%▽CO2: 17%▽CH4: 8%▽LHV 2,615 kcal/m3Nであり、700度ではH2: 28%▽CO:30%▽CO2: 25%▽CH4: 13%▽LHV 3,233 kcal/m3N (40℃以下 相対湿度80%以下)というようになった。
 現在、岩手県衣川村にて水素を生成するガス化炉でカーボンナノチューブをつくっている。山口県の施設には海外を含め、計2000人が見学に訪れている。複数のバイオマスを混合してもガス化は可能であり、高い可能性を秘めている。




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