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【分科会B】 森林からの搬出について



【分科会B】 森林からの搬出について

場所 マリオス18階 188会議室

報告者1:岩手大学農学部農林環境科学科 助教授 立川史郎氏
「林地残材のトラック道路までの搬出コスト」


林地残材のトラック道路までの搬出コストを調査した。
未利用間伐木のスイングヤーダによる全木集材作業では、列状間伐木の簡易架線集材と切捨て間伐木の直引き集材の搬出を行った。
列状間伐木の簡易架線集材は杉25年生で1列伐倒の3列残しで行った。
この方法は集材木や立木に傷をつけにくいが、ワイヤーロープの架設、撤収などに時間がかかる。
切捨て間伐木の直引き集材は伐倒方向がばらばらなので直線に集材するのが困難であった。
立木に傷をつけないためには頻繁に機械を移動しなければならない。集材作業能率を比較した場合、集材距離が短ければ直引き集材、長ければ簡易架線集材が有効であった。
集材作業コストは集材距離が50m以下であれば直引き集材、50m以上であれば簡易架線集材が安かった。
1回あたりの集材材積が多ければ能率、コスト両方で良い結果が得られた。



素材生産時に発生した残材のフォワーダによる運搬作業を行った。短幹材と不定形材を対象とした。
不定形材はたくさん積載できないうえに積み込みの時間が長くなった。
よって、短幹材よりも不定形材は作業能率が悪く、作業コストは4倍かかった。



低コストで搬出する為には集材量・運搬量を増やし、集積方法の改善が必要である。
トラック走行可能な作業道の整備も重要で、収集可能範囲の拡大、集材距離の短縮化、トラック道路までの搬出行程の簡素化が望まれる。


報告者2:岩手県林業技術センター 森林資源部 佐々木誠一氏
「木質バイオマス利用のための低コストチップ供給システム開発」


林業振興、地球温暖化防止対策として木材チップを燃料利用するためには未利用材、低質材のエネルギー利用が望まれる。安価に供給できる方法を調査した。
製紙用チップ工場から、移動式チッパーにより山土場でチップ化、専用土場でチップ化、ボイラー前でチップ化の4つの燃料用チップ供給システムを調査した。



システム別のコスト試算では山土場でのチップ化が他のシステムよりも割高である。
しかし、重油価格が3年前の1.5倍になったのでどのシステムでも重油より安く供給できる。その分の価格を山元と消費者に還元できる。



梢端材や土場残材などの未利用木質資源の燃料用チップ化試験を行った。
チップ工場と移動式チッパーとの生産性を比較した場合、製紙用チップ工場のチップ生産能力は、移動式チッパーの約1.7倍であった。
コストを比較した場合、既存の製紙用チップ工場は移動式チッパーよりも低コストで生産できるが、新規工場の場合は割高となった。
製紙用チップ工場からの供給では、トラック積込土場にある土場残材であればチップ材よりも低いコストで供給でき、土場残材の有償化が可能である。
道ばた集積の間伐材やトラック積込土場にある梢端材も重油換算コストよりも安いコストで供給でき、有償化が可能である。
以上より木質バイオマスの利用拡大は、林業・木材産業の活性化に大きな役割を果たす可能性が高い。

報告者3:有限会社フォレストサービス 猪内次郎氏
「小岩井農場の取り組み〜間伐材の搬出による循環利用と森林の再生〜」


小岩井農牧の森林は約2,000ha。明治32年から不毛の原野に造林を始めた。
100年の長伐期、生産・管理などの目的に沿った施業及び法正林を目指している。
平成7年より森林管理・施業を行う有限会社フォレストサービスを設立した。従業員は18名で平均年齢は40歳弱である。
対象林齢30〜35年の若齢林間伐を行っている。通常は100年伐期で4、5回の間伐を行うが、これは第1回目の間伐である。
ここ30年間で554ha行い、10,732m3生産した。1m3当り搬出だと、昭和53年と比較して現在は丸太収入が半分になり、事業費は約1.2倍になった。
補助金収入を加えてやっと収益がでている状態である。森林の維持には健全な収益体制が重要である。



林業事業体の収穫コストの中で人件費の占める割合は各年とも多くなっている。
平均賃金は年々上昇傾向にあり、生産原価を下げるうえでこの比率を下げることが必須である。



間伐方法は、昭和53年は定性間伐である。「チェンソーで伐採」⇒「ブルドーザで運搬」⇒「人ではい積み」という方法である。
生産性は0.47m3/人日で悪かった。平成3年は列状間伐にし、「チェンソーで伐採枝払」⇒「林内作業車で運搬」⇒「チェンソーとグラップルで造材」とした。
生産性は1.63m3/人日でよくなった。平成17年は木を運ぶ角度を斜めにした魚骨状間伐にし、「ハーベスタで伐木枝払、木寄」⇒「林内作業車で運搬」とした。
生産性は2.47m3/人日とさらに向上した。
間伐材の搬出による循環利用を推進するには作業の機械化、路網の整備、安定した収益体制、低質材の利用促進が必要である。
路網の整備は作業者が作業場まですぐに行くことができ、トラックが近くまで入れることでコストダウンできる。
安定した収益体制は山から間伐材を搬出する大きな力になる。搬出により得られる効果として、国土崩壊防止、林野火災の延焼防止、二酸化炭素排出削減、森林の再生があげられる。
森林を再生させるために天然下種更新も行っている。
1954年植栽のアカマツ、カラマツ林3haを50%の強度間伐、上層木の枝おろし、間伐木の搬出、枝条除去を行った。
その後10年でウダイカンバやホオノキなど高木性広葉樹が1500本以上生えてきた。




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