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分科会A 木質燃料の規格や品質表示について


【分科会A】 木質燃料の規格や品質表示について


報告者1:(財) 日本住宅・木材技術センタ−務理事 西村勝美氏

「木質ペレットの利用促進事業〜ペレット品質の規格化を目指して〜」
木質ペレットが全国的に普及しはじめており、2005年度より林野庁の委託事業に着手した。計画では1.ペレットの市場構造分析(H17〜18)▽2.ペレットの品質・性能分析と燃焼装置の適応性試験(H17〜18)▽3.ペレットの国内外規格調査(H17)▽4.需要促進のための普及活動(H17〜18)▽5.全国連絡会議の設立条件調査(H18〜19)▽6.国産ペレットの品質規格案の検討(H18)▽全国連絡協議会の結成と品質規格の策定(H19)を考えている。今回は、実態を把握するためのヒアリングとアンケート結果を中間報告したい。
【供給構造】
1) ペレット製造の実態
 ・現在稼動する20箇所をみると、経営主体は株式会社と協同組合が65%をしめ、開始時期は2003年度の林野庁助成が始まってからが多い。
 ・最近の生産量は2003年10箇所2356トン▽2004年13箇所3658トン▽2005年18箇所8642トン。将来の見通しは3年後には25工場30,000トンに上る見通し。 
2) 工場規模は近年になって小規模から中規模へと生産能力は拡大している。一方で需要の確保には悩んでいる。

規模(ton/年間)15年16年17年
1〜50未満
50〜100未満
100〜500未満
500〜1,000未満
1,000以上

3) 原料はバーク(樹皮)37%▽ホワイト(木部)41%▽全木22%と諸外国に比べ均等に配置されている。原材料の種類も、製材工場ののこ屑や製材背板など残渣が47%と増えている。
【需要動向】
4) ストーブ購入の動機
 「ぬくもりや癒し」を求めるユーザーが31.8%▽化石燃料節約・地球温暖化対策としてが22.7%▽地域振興11.4%と並ぶ。経済性は、ストーブ購入補助9.1%の次に上がる。
5) 灰の処理
 半数が自宅の庭に捨てており、33%は家庭菜園に利用。12.5%はゴミとして回収先に出している。
6) 問題点
 費用的に「高くつく」と回答したのが14.3%だったが、42.9%は「安くつく」と回答。実感として「温かい」と感じる人が82.6%を占めていた。一方、継続して使用するに当たり、要望として低価格のストーブ供給31.3%▽ペレット価格の引き下げ18.8%▽ストーブ改良12.5%▽ペレット品質向上6.3% となっている。


報告者2:岩手・木質バイオマス研究会会長 金沢滋

「木質ペレット燃焼灰問題で学んだこと」−利用者への表示の重要性−
岩手県は2005年3月30日、木質ペレットストーブの燃焼灰から有害物質の六価クロムが基準値を上回って検出されたことについて、記者会見した。その後、利用者から灰のサンプル160検体を分析し、8トン以上のペレットを独自に製造、燃焼するなどして調査研究を進め、10月26日に再度記者会見し「通常使用する上では安全である」と事実上の"安全宣言"を出した。
その過程でいくつか学ぶことができた。もっとも大きな点は、すでに多くの利用者がいる実態をふまえ、木質バイオマスを取り扱う上で、利用者への表示を一刻も早く実施すべきだ、という実感だ。以下に要旨を述べる。
1) 木質ペレットの灰から六価クロム溶出が検出された。無処理の木から出た灰でも重金属が検出される可能性はある。(『木とエネルギーハンドブック』(岩手・木質バイオマス研究会、2005年、P55参照)
2) 六価クロム溶出には、@ペレットそのもの、Aペレット製造過程、Bペレットストーブの燃焼部分による金属との関係 という多段階の要素が関わっていた。以前には予期できなかった。
3) 重金属を原材料段階で予測し、完全にゼロにすることは極めて困難である。
4) ほかのトラブルや問い合わせを総合すると、末端流通者や利用者側も保管方法や、取り扱い方を知るべきだと実感する。(これまではボイラーのように大量需要者対応だった)
5) 規格・認証への取り組みは時間と費用がかかるが、表示に関しては、利用者への呼びかけも含め早急に実施すべきだ。
【表示案】



6) 表示をする際には、緊急時対応も互いに連携する必要がある。(品不足や回収への対応)



※諸外国よりも原材料の種類に富むため、規格化には時間がかかる。規格より前に、利用者への呼びかけが必要で、そのために注意事項と原材料の種類、製造年月日などを盛り込んだ表示を一刻も早く取り組む必要がある。岩手県では、流通関係者による協議会設立などから進めていきたい。

7) チップに関しては、取引やボイラーの調整上、品質に関する取り決めが必要。まず小型ボイラーから取り組む必要が出ている。
以上、今後、表示むけてご関係各位の連携を切に要望したい。


報告者3:岩手県林業技術センター 主任専門研究員 多田野 修 氏

「燃料用木質チップの規格案について」
 岩手県林業技術センターでは、2001年度から岩手県が進める木質バイオマス利用推進の一環として、海外の木質バイオマス先進地から高含水率チップをボイラー燃料として利用可能なチップボイラーを導入し、「チップボイラーによる木材チップの燃料利用技術」に関する研究開発を実施してきた。
 研究開発の結果、木材チップをチップボイラー燃料として利用するには、含水率の違いなどが効率に大きく影響することから、木材チップに一定の「品質規格」が必要であることが明らかとなった。また、木材チップの形状によっては、チップボイラーの燃料供給装置におけるトラブルの原因となり、自動制御による連続運転の妨げとなることもわかった。
燃料用木材チップの価格設定においては、含水率により発熱量が変化することから、含水率による発熱量を考慮して検討すべきであると思われる。今回は、これらの研究結果をもとに「燃料用木質チップの規格案」を取りまとめたので、関連する研究結果と併せて報告する。
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1.現行法規の把握
まず、現行の大気汚染防止法に基づいて当センターのチップボイラーの排気を測定したところ、煙に含まれる有害物質は基準を大きく下回ることがわかった。ダイオキシン類も同様に、大きく下回った。



2.含水率の作用
一方で、燃料としての木質チップの性能は、含水率により大きく左右される。このほか、チップを供給できるフィーダーの形状などにより、チップの形状はきめられる。保管方法もチップ化後だと逆に含水率が増える場合もあり、丸太のまま乾燥するほうが効果があることがわかった。



3.規格案 これらのことから、下記のような規格案を提案する。
1)原材料: 燃料用木材チップの原材料は、原木丸太、製材端材等森林より生産された一次生産材を用いることとし、建築廃材、集成材、合板等再利用木材は使用しないものとする。
2)加工方法及び形状: 燃料用木材チップは、複数の平刃物が装着された切削型チッパーにより加工された短片状のものとする。
3)標準寸法: 縦・横20±5mm、厚さ4±2mmを標準寸法とする。なお、長尺チップ(長さ200mm以上)の混入率は1%以下とする。
4)樹皮含有区分:燃料用木材チップは、樹皮の含有の有無により、以下の3種類に区分する。
 @皮なしチップ・・・・樹皮を含まない木材チップ
 A皮付きチップ・・・・皮付き丸太を移動式チッパー等でチップ化した場合等に生産される重量比で1〜2割程度の樹皮を含んだ木材チップ
 B樹皮チップ  ・・・・粉砕した樹皮を主体とする木材チップで、木部を2割程度以下含んだものも含む
5)含水率区分
 燃料用木材チップは、含まれる水分の割合により、以下の3種類に区分するものとする。
@低含水率チップ・・・・乾量基準の含水率で40%以下
A標準含水率チップ・・・・乾量基準の含水率で40〜80%
B高含水率チップ・・・・乾量基準の含水率で80〜120%
            (m‐m0) ×100(%)
 ※ 乾量基準の含水率=  m0     
      ただし、m:水分を含んでいる木材の質量、m0:水分を含んでいない木材の質量
6)発熱量
 燃料用木材チップの標準発熱量は、含水率区分に応じ以下のとおりとする。
@低含水率チップ・・・・3,547Mcal/t(含水率20%相当)
A標準含水率チップ・・・・2,510Mcal/t(含水率60%相当)
B高含水率チップ・・・・1,888Mcal/t(含水率100%相当)
7)品質表示
 燃料用チップの品質表示は、以下のとおりとする。
(表示例)生産工場名:○×木材、販売日:平成○年○月○日、樹種:針葉樹ミックス、樹皮含有区分:皮なしチップ、含水率区分:標準含水率

これらのことから含水率を考慮した場合、チップ価格は、含水率区分ごとの発熱量をもとに、重量当り単価×重量を基本とするとわかりやすい。ただし、供給ロッド、運搬距離等も考慮する必要がある。

以上



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