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木質燃料燃焼灰ダイオキシン類調査



1.背景と目的
岩手県と当研究会では木質ペレットの一定の品質を確保するために規格案策定事業を進め、原料や寸法、含水率などの基準を整えてきた。2004年3月には既存の法規や条例を活用した認証制度を提案し、同年10月には県内2製造施設の木質ペレットが建設系解体廃材を使用しないことを確認のうえ、岩手県再生資源利用認定製品の認定を受けた。
しかし、クリーンな木質ペレットを燃料としているにもかかわらず、ペレットストーブの使用者ならびに導入を検討している方々より「ペレットは安全か」という問い合わせが増えている。昨今、ダイオキシン類対策特別処置法による野外焼却の規制が始まり、燃焼時及び燃焼灰の取扱時にダイオキシン類などの有害物質が放出されるのではないか懸念されている。「燃やす」ことへの不安が少なからずあると思われ、認定を受けたペレットであっても安全性を疑問視する消費者がいることは事実である。
それに対し「木は有毒ではない」と一般的に認識されてはいるが、証明することができていない。財団法人日本環境協会のエコマーク認定基準(商品類型NO.115)にある木質ペレットの基準でも、原料の規定にて、建築系解体廃材など不純物が混入しているおそれのあるものを除外しており、重金属類やダイオキシンの発生が考えられる塩素の含有基準は定めていない。
使用者の不安を取り除き、木質燃料の普及を促進するためにはクリーンな原材料であっても安全性をしっかりと示すことが必要である。この調査では岩手県産木質ペレット及びチップ、薪の燃焼灰について、問い合わせの多いダイオキシン類の含有量を調査した。

※エコマーク商品類型NO.115「間伐材、再・未利用木材などを使用した製品Version2.0」 (財)日本環境協会 より抜粋
4-1.環境に関する基準
(4)D.梱包用材(ただし、食品用の梱包材に限る)、E.木炭、F.活性炭、G.その他業務用品(燃焼して使用するものなど)およびH.土壌改良資材にあっては、原料に建築解体木材の使用のないこと。ただしF.活性炭のうち、焼却炉吹込用活性炭は本項目を除外する。


2.方法
4種類の木質燃料をほぼ同じ条件で燃焼させて灰を採取した。燃焼検体は葛巻林業株式会社製バークペレット(広葉樹皮)、けせんプレカット事業協同組合製ホワイトペレット(針葉樹木部)、チップ(針・広葉樹木部)、薪(広葉樹)である。バークペレットとホワイトペレットは共に岩手県再生資源利用認定製品である。
燃焼は2004年11月9日に岩手県工業技術センターで同時刻に一斉に行った。燃焼器は鉄板製薪ストーブ。ホームセンターなどで扱っている一般的なものである(写真1)。大きさは縦×横×深さが56cm×36cm×27cm。検体の燃焼量は30s〜45kg (表1)。平均燃焼温度は401〜589℃、含水率は6.6%〜13.8%であった。燃焼の様子を写真2に示す。
得られた燃焼灰(写真3)のダイオキシン類濃度を専門の分析会社に依頼して測定した。
  表1 倦怠の燃焼量、平均燃焼温度、含水率

 バークペレットホワイトペレットチップ
燃焼量30kg45kg30kg30kg
平均燃焼温度422℃458℃401℃588℃
含水率12.1%6.6%14.8%13.8%

 写真1 薪ストーブ

 写真2 燃焼の様子

 写真3燃焼灰

3.結果
表2 燃焼灰中のダイオキシン類濃度
試料名ダイオキシン類毒性等量(ng-TEQ/g)
バークペレット0.00000098
ホワイトペレット0.00000040
チップ0.0000011
0.0000011

※ダイオキシン類とはポリ塩化ジンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン、コプラナーポリ塩化ビフェニンをまとめたもの。
※ngは10億分の1g。TEQとは毒性等量を表す符号で、ダイオキシン類の中で最も毒性の強い異性体2,3,7,8−テクラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8−TCDD)の毒性を1として他の毒性を換算した事を表している。

燃焼灰中のダイオキシン類※(1)濃度は全ての試料について、ダイオキシン類対策特別措置法による基準値3ng-TEQ/g以下※であった(表2)。どの試料も基準値に比べ非常に低い濃度になっており、ダイオキシン類の発生はきわめてゼロに近いといえる。一次加工後の端材を含む、ピュアな木材を原料としたバークペレットやホワイトペレット、チップ、薪の燃焼灰の取扱による環境への負荷、健康への影響はダイオキシンに関してはほとんどないと思われる。

今回の調査の結果、木質燃料の安全性を示すデータの1つが得られた。「木は有毒ではない」と当たり前に思われていることでも、実際に調査をして数字に示すことが消費者の安心につながる。今後も普及を妨げる問題を1つ1つ地道に解決していくことが求められるであろう。

※ダイオキシン類対策特別措置法では、ばいじん等(ばいじん及び焼却灰その他の燃え殻をいう) に含まれるダイオキシン類の含有量が3ng-TEQ/g以下の場合は、管理型処分場で処理できるが、超える場合は特別管理廃棄物として取り扱わなければならないと規定されている。特別管理廃棄物は埋立て処分や海洋投入処分が禁じられており、定められた無害化処理を施さなければならない。




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