ホームへ戻る

木質バイオマスサミットinいわて メーンフォーラム


  

○パネラー
    青森県知事  三村 申吾氏
    秋田県知事  寺田 典城氏
    和歌山県知事 木村 良樹氏
    高知県知事  橋本 大二郎氏
    岩手県知事  増田 寛也氏
    スウェーデン ヴェクショー市長
           カール・オルフ・ベングトソン氏
○ コーディネーター:岐阜県立森林文化アカデミー学長 熊崎 實氏

《自己紹介と取り組み》

増田知事 岩手の豊富な森林資源を活用して、会場にもあるようなペレットストーブを県と民間企業の共同開発をしたり、さまざまな調査事業、普及啓発活動を通じ、"木質バイオマスエネルギー"として3ヵ年かけて消費者のもとに届ける取り組みをしている。
三村知事 自然エネルギーへの取り組みは、風力をはじめさまざまはじめている。木質バイオマスエネルギーに関しても、北東北3県合同事業として進めたい。
寺田知事 秋田杉として有名だが、一方で県内に廃材を中心にした木質バイオマス発電所を設置するなど、取り組みをしている。県内には、木屑を使った木焚きボイラーで自社の施設内暖房をしているところも多い。しかし、コストとアウトプットのバランスが難しい。
木村知事 77%を森林で覆われる和歌山県は、森林政策として「緑の雇用対策事業」を要望し、イラク派遣法案が成立した補正予算で95億円を認められた。木質バイオマスに関しては、熱需要の多い北国ではないためいかに需要をつくっていくかが課題。マテリアルとしての間伐材を考えると、中国への輸出は注目したい。
橋本知事 2ヵ年かけて県民の合意を形成した森林環境税(1世帯年間500円)を実施した。法定外の普通税で目的税には当たらず、1.4億円の財源を確保することができた。これを原資として別基金会計を設置し、県土の88%を占める森林への政策の第一歩としたい。

《トップのイニシアチィブに関して》

熊崎コーディネーター 世界の木質バイオマス利用について、先進にいるヴェクショー市と主催者でもある岩手県、岩手・木質バイオマス研究会は交流を続けている。進んでいるスウェーデンの中でも、ヴェクショー市はなぜリーダーたりえたのか。
ベングドソン市長 3つのポイントがある。
(1) スウェーデン国民の環境への高い関心
 ヴェクショー市は1970年代から市中心部の湖水浄化に端を発した環境問題があった。二酸化炭素削減についての合意を議会、市で合意することができ、単独で2010年までの20年間で約50%の化石燃料使用を削減する宣言をした。そのために、いくつかの熱供給施設(各家庭の個別暖房ではなく、地域集中の施設から各家庭に熱を温水で供給するシステム)を設置したほか、郊外の個別家庭にはペレットストーブ導入などを薦めた。
(2) 政治家が長期的な方向性を示すこと
 上記の合意事項を推進するために、一歩ずつの過程を踏み出すこと。アクションプラン「ローカルアジェンダ21」を示し実行することはもちろんだ。このためには市議会の合意が必要となるし、地域ごとの政治力も大きな力となる。
(3) 民間・企業の役割
 ヴェクショー市は、自然保護団体とも協力関係にある。例えば、「ローカルアジェンダ21」を策定した担当者は、市職員だがスウェーデン自然保護協会の職員だった人物だ。(補足:市の環境政策に関しては、同協会のアドバイスを受けているし、市職員の環境教育も同協会が実施している)
 企業の立場は重要だ。新しい取り組みをすれば、新しい産業が生まれる。そこには新しい商品もあるし、PRもしてくれる。とても重要な位置にある。

 まず、政治家が方向性を提示し、一歩ずつプロセスを進める姿勢が大切なのだ。

寺田知事 今の話を聞いて、長期的視野にたてばさまざまなことが可能になるように思う。たとえば、(建設廃材など木質系の)産業廃棄物を利用すれば、木屑焚きボイラーは増えるようになるし。あとはいかに緑を保全していくか、だろう。
増田知事 石油中心の日本では、まず国全体での合意形成が必要だ。(二酸化炭素削減を目的にした)環境税に関していえば、企業と対立している状況だ。地域で覚せいした企業の役割、意識が必要だ。

++++++++++++
 《地場産業・地域の振興策として》

熊崎コーディネーター 岩手県の取り組みは需要の拡大を、木質バイオマスを燃焼する機器の開発によって進めているが。
増田知事 昨年春に発表したマニュフェストには平成18年度にはペレットストーブを2120台普及させる、とした。石油から木質に転換する量は5400トン、二酸化炭素削減は1%強だ。普及は早急に、急速にやりたい。しかし、ペレットストーブ開発には課題もある。
(1) 本体価格面 立ち上がり時期には行政の支援も必要だろう。
(2) 燃料ペレットの安定供給 現在、県北部に1社1,300トン/年、県南部に1ヶ所1,000トン/年ある。流通供給も課題で、できるだけ安く供給できる体制にしないといけない。
  このために、岩手・木質バイオマス研究会を中心に、流通業者、関係者、製造者を集めて木質ペレット流通懇談会・実務会議を開催してきた。
 商品を開発するにあたって、ハードとソフトが必要だ。ペレットストーブだけではなく、現在はチップボイラー開発も進めている。ペレットに関していえば、木の皮だけではなく幹部分をどうやって燃やすのかといった課題もある。機器ができただけではなく、燃料をどうやって供給するかを検討し、最終的には森林の付加価値を高めていくことが目的である。それだけに地場の商品開発が大切なのだ。
三村知事 構造改革特区としてりんごの剪定木のガス化・ガスタービンシステムコジェネとして取り組む。森林資源は間違いなくすばらしいマテリアルだ。だが、コストはかかることも事実だ。
寺田知事 木質バイオマスによる発電システムを組合方式で1,500世帯に供給できるが、電力会社は買ってくれず3ヶ所とも自家用発電でしかない。森林資源は毎年蓄積されていく。県内でも37万ヘクタール、300万立方メートルが増えている。住宅建設などもふくめて、きちんとした利用をすすめていきたい。
木村知事 熊野市でバイオマス発電システムが動き出している。北国と違い熱はいらないので、ガス発電から熱をとりそれをまた発電に活用する。製材所の木くずを有償で買い取る方式にしている。コストも含め、トータルな評価を実証して示したい。
橋本知事 地域の合意形成 で意識を高めることがなにより大切だろう。経済産業省のFS調査ではコストを指摘されている。少なくとも発電のみではなく、ガス化による効率化や熱利用を考えないといけないし、広範囲に分散しているエネルギー源をどうやって回収するか。物流のロジスティックが重要である。現在、グリーンハウス農業では70%が油代という。四国でも(ガス化による)効率は20〜30%で1万3000トンのバイオマスが活用されるという試算もあり、有望と考えている。

《成果の積み重ねを》

ベングドソン市長 岩手県、岩手・木質バイオマス研究会との交流を続け、こうして互いに学びあえることが大切だと実感する。私どもも他分野とも協力しながら何十年間学んできた。私から言えることは
(1) 早い段階で成功が目に見えること
(2) 成果が見えたら、次に何をするかを手がけること
(3) 企業に環境の大切さを気づいてもらうこと (各分野でのアプローチが大切です)
 そのためには、まず帰ったら小さなことでかまわない。実行することです。
 スウェーデンでは、森は産業にとっても大切な恵みとなっています。特にヴェクショー市では環境関係のヴェンチャービジネスを育てるシステムがあり、木質バイオマスを豊かな資源としてみることも可能です。
 みなさんとお会いできたことを感謝しております。ありがとうございました。

熊崎コーディネーター あっという間の時間でした。まとめることはできませんが、私としては
(1) 広い文脈でのエネルギー転換を図ること。 長期ヴィジョンの必要性。
(2) うまく電気と熱を活用し、コストを下げていくこと。
(3) 政治は 合意形成を含めたイニシアティブをとること。
と感じました。ご参加のみなさまにおかれましても、地域でのイニシアティブをとっていただきたいと願います。
 長い時間、ありがとうございました。



+++++++++++++++++
木質バイオマスサミットinいわて の簡単な概要については、岩手県のhpにも掲載されています。
→ http://www.pref.iwate.jp/~hp0552/summit/home.htm



ホームへ戻る