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木質バイオマスサミットinいわて 第一分科会 みどりのエネルギーでできるまちづくり


   

飯田 コーディネーターの飯田です。この第一分科会は、まず社会的な側面に注目しながら進めていきたい。もうひとつは、スウェーデンと日本の共通点を探っていきたい。まずは、カールからベクショー氏の取り組みについて話してもらいたいと思います。

ベングトソン 先ほどのフォーラムでも話したので、重複するろころもあるが、  まずヴェクショー市はスウェーデン南部にあって、この地域の中心都市である。
 ヴェクショー市は森に囲まれているが、湖も多い。ヴェクショー市の環境に関する取り組みは30年以上前に湖の浄化に関するものが出発となった。これがきっかけとなって、1993年にヴェクショー市の環境政策について採択をした。環境年次報告も翌年より報告している。そして96年に、化石燃料の使用を止めることを決定した。2010年までに1990年レベルのCO2を50%削減することにした。
 気候変動に関する取り組みは、既に1980年代にバイオマスCHPプラントが導入された。これはスウェーデンでも早いほうだった。暖房だけでなく発電も行えるコージェネプラントの建設を行った。これは当時スウェーデンで最大の環境投資だった。発電は非常に関心の高い分野であるが、作った電力をどう販売するのかといった問題もクリアしなくてはいけない。
 暖房分野では成果が上がっているが、交通分野ではなかなかCO2が減少せず今後の課題だ。
 現在進展中のものとして、地位地熱供給、個人住宅での電気暖房から地域暖房へ・・・・などだ。こうした戦略が出来ているので、あとは実践あるのみだ。
 こうした取り組みで大切なのは、経済的なメリットがあること、市民にとってなにか良いことがあるということが必要だ。交通分野は非常に難しい問題だが、新しいエンジン、新しい燃料が必要になってくるだろう。
 最後に、世界で一番有名なスウェーデン人を紹介したい。それはカール・フォン・リンネだ。約300年前にヴェクショー生まれ、生誕300年の記念事業がスウェーデンとしても、ヴェクショー市としても企画しているので、是非訪問して欲しい。

飯田 ありがとうございます。今、当たり前のように言っていたが、スウェーデンと日本のエネルギー政策の違いに触れておきたい。スウェーデンのエネルギー政策は大きく産業、交通、暖房、発電の4つの柱に分かれている。スウェーデンでは、エネルギーの需用者を重視したものになっているが、日本ではエネルギー業界対策というべきものだ。特に大きな違いは、エネルギー政策における暖房の位置付けがはっきりと与えられていることだ。残念ながら日本では、そうした考え方そのものがまずない。
 それから自治のあり方の違いが大きい。地方分権がしっかりと根付いており、小さな補完性原理、大きな補完性原理など、自治体の自立と補完のあり方の考え方、価値観の共有がなされている。こうした自治のあり方が、様々な取り組みを可能なものとしている。
 これらを基本にしながら、アジェンダ21を策定して以降、積極的に国際交流に乗り出している。そう言った話しをゴードマルク氏から話してもらいたいと思う。

ゴードマルク 私たちは今から考えると、信じられないような失敗をしてきた。それはつい最近のことである。
 ヴェクショー市といくつかの企業で、ヴェクショーのエネルギーに関する会社を作った。
 ヴェクショー大学にバイオエネルギーの学部を創設することを決めたが、政府にそれを求めたら何年も待たされるので、自分たちでまず学部を作り、数年後に実績をあげてから政府に支援を求めた。
 そして、企業と大学のシンプルな協力関係を築いたわけだが、これらは様々な国から注目を集めることとなり、スウェーデン政府から、この会社を正式なものとしてはどうかという働きかけがあった。そこで、スモーランド・バイオエナジー・エクスポ・コーポレーションという会社をつくった。これには、バイオエネルギーに関わる様々な企業、林業関連企業も参画している。
 このスモーランド地域はスウェーデンの家具生産の60%を占める地域であり、これらの企業との協力関係も構築している。そして、スウェーデンでもっとも知られているのがガラスだろう。ガラス生産の企業、研究機関もある。この産業と協力して一大観光地に生長することが出来た。
 最近行われている取り組みは、交通分野へのDMEの利用である。スモーランド地域で取り組んでいるいくつかの都市を結ぶとバナナのような形になるので、DMEバナナと呼んでいる。
 もうひとつ取り組んでいるのは、小規模な発電機器である。最近電気料金が上がってきたので、この小型発電機の開発が注目されている。
 この他、多くの林業機械が開発されている。フォワーダー、移動チッパー、枝をまとめるバインダー、などである。
 このような様々な取り組みのなかで、ヴェクショー市の役割とは何かというと、
 1.ミーティングする場所を提供。
 2.ミーティングのアレンジ
 3.適切な関係者を集める
 ここまですれば、市はやることはほとんどなくなる。せいぜい、
 4.コーヒーを提供する
ということぐらいである。あとは、集まった人がちが、様々なアイディアを提供してくれるのだ。
 この他、重要な役割は
 1.国内外の補助金を獲得し、配分すること
 2.他の国、地域、都市からの政治家や職員とともに働くことを
 3.興味深くハイ・クオリティーのテクニカル・ヴィジットの実施(様々なノウハウの提供)
である。
 最後に、今日、ヴェクショー市のHPに日本語のサイトを作った。www.vaxjo.se/japan
 今日はいろいろな話しをしましたが、小さなこと、出来ることから始めることが重要だ。こうした小さな積み重ねが大きな成果を生むだろう。

休憩

  

飯田 岩手・木質バイオマス研究会の会長をしている金沢さんに、研究会の活動内容、岩手の取り組みなどについて話してもらおうと思う。

金沢 今の岩手の状態を一言で言うと、点から面への移行期であろう。各地にストーブやボイラーが入り始めたというところである。
 今に至る経過について説明したい。2000年3月に金沢はじめ3名がスウェーデンに渡り、バイオマスに関しての理解を含めた。その1ヶ月後に増田知事もスウェーデンを訪問し、ベングトソン市長とも会った。同年、研究会を立ち上げ活動を続けてきた。研究会が行ってきたのは、普及・啓発、産業支援、研究等である。まずは、バイオマスを使ってくれる消費者の創造、供給、流通の支援によって、バイオマスを消費者に結びつける手伝いを行う、等である。
 ここで重要なのは増田知事の姿勢である。やはりトップのイニシアチブが大切で、いわて型ペレットストーブが誕生した。
 市町村の取り組みだが、林業を軸とした住田町の取り組み、新エネルギーを軸とした葛巻町の取り組みに触れておきたい。
 課題と展望について、いくつかまとめてみた。コストが高いからダメ、と簡単に言わないこと、原料の確保をしていくこと、ペレット流通の難しさ、新産業の創造は一夕にしてならず、圧倒的に安い灯油、北国は熱利用だが冷房も可能、固形だけでなく液体利用も考える・・・などである。

飯田 マグヌスソンさんに、スウェーデンの木質バイオマス利用の技術開発の今日に至るまでの概要についてお話いただけますか。

マグヌスソン 1984年から活動を開始した。この20年あまりに世界中に800程のプラントを完成させた。そして今年、日本で初めて松尾村の森林科学館に設置することになった。従業員は25人で、輸出の占める割合は45%だ。他の国に輸出する際、最初はもちろんいろいろな問題を抱えた。一番重要なのは、質のいい信頼できる代理店と提携することである。
 私たちがどういったタイプのボイラーがあるのか紹介したいと思う。ひとつは統合型のボイラーで、効率は85%、200KWから5MWまでも出力がある。松尾村に導入したのもこのタイプのひとつだ。

飯田 このあと質問に答えていきたいと思う。最初にベングトソン市長にだが、最初のきっかけはなんだったのか。市長のイニシアチブなのか、スウェーデン環境保護団体との連携なのか・・・、といった質問だ。

ベングトソン 最初に話したとおり、30年来取り組んできている湖の浄化事業の成功が環境政策の出発点となっている。この事業によって議会や市民への理解が進んだ。二酸化炭素削減の環境政策が合意を得るために数年間に渡って、企業、市民との対話を行ってきており、市長をはじめとする行政はその場の提供や支援などを行ってきたのであり、市長のイニシアチブだけによってここまで来たわけではない。

飯田 ゴードマルク氏にはどういった失敗があったのかという質問が来ている。

ゴードマルク 林業機会の設計のミスがよくあった。ヤンフォーセンはそう言うことはないと思うけど。

マグヌスソン チップボイラーは設計が非常に重要で、湿ったチップを使う場合には特に大切た。ペレットやブリケットなど乾いた燃料の場合は全く違った考えで設計しなくてはいけない。

飯田 もう少し補足するとどういうことか?

ベングトソン 繰り返しになるが、先駆者になるということでその方向性を付けること。やりやすいことから始めると言うことだ。バイオエナジーの分野について、日本、岩手の皆さんは私たちにも役立つことを発見するだろう。

ゴードマルク 私の方からはシンプルなことから初めて欲しいと言うことです。もし、迷うことがあったら是非ヴェクショーに来て確かめてみてください。

飯田 この熱気を次にどう結びつけていくのか

金沢 行政の縦割りが厳しいが、財政が厳しい状況のなかで、その壁を取りはうことが出来る状況が出来つつある。いろんな方の協力で少しずつ進めていきたい。

飯田 新しいビジネスを作りながら、その利益をみんなで共有するということが大切ではないか。このサミットのようなきっかけを受け止め発展させることが大切だが、このサミットに1000人を超える人たちが参加によって実証されたのではないか。今日はどうもありがとうございました。




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