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国際連合大学とLEADジャパン・プログラムによる岩手研修
いわての里山を新産業の舞台に!


2003年11月29日
岩手県環境保健研究センター


講演


岩手・木質バイオマス研究会
会長  金沢滋
 「エネルギーと地域の持続可能性」をテーマに、岩手県を対象とした国連大学のLeadジャパンプログラムの研修発表が11月29日、盛岡市の県環境保健研究センターであった。
「2030年岩手エネルギー白書」と題した提案では、ユビキタス(分散統合)・エネルギー社会をテーマに、再生可能エネルギー利用からエネルギー自給率100%を目指すことなどを盛り込み、「薪炭林の活用」を軸とした木質バイオマスの利用中心の提案がなされた。
 研修生は、日本国内企業、地方自治体、NGO、メディアから応募のあった8人。国内外で18ヶ月にわたる研修を実施している。 岩手県には25日に来訪し、葛巻町の自然エネルギーの取り組み、雫石町内での地熱エネルギーの取り組みを視察後、岩手県を題材にした地域づくりの提言をまとめた。
 プレゼンテーションでは、分散したエネルギーや取り組みを統合する「ユビキタス・エネルギー社会」を目指し、人口減少と技術向上、住宅性能向上を加味した上で 1.再生エネルギーの利用によるエネルギー自給率100%以上
2.二酸化炭素の排出量を2030年までに1990年比30%以上の削減
3.エネルギー効率を30%向上
 を提言。
 現状として「コスト高、費用面での支援の必要」「市場や市場環境の整備の必要性」「運輸面での施策の必要性」「県民や事業者への学習・普及啓発」「市町村レベルでの連携、県からの支援」など課題を抽出。
電力では分散型電源の普及拡大と実効性の高い省エネの推進、熱需要では木質バイオマスを利用した熱源の多様化、断熱強化による熱需要の向上を挙げた。 また、交通面では、一世帯あたりの自動車保有台数が全国平均の1.5台を上回る1.9台であること、公共交通機関の利便性が低いことも指摘。
 施策として、以下のことを掲げた。
 【新エネルギー導入の環境整備】
@ 未利用の木質バイオマスとして、薪炭林の大幅利用
A エネルギー債の発行による助成制度拡大
B 小規模分散型低コスト電源、薪炭林開発
これらから、エネルギー量を現状の約20万klから2030年には300万klへ拡大し、減少した需要量と合致することとした。 さらに、交通面ではポートフォリオ政策(一定比率販売割当)を提言。
・ 2030年までに販売自動車と燃料の30%をクリーンエネルギー化
・ ポートフォリオ政策による罰則金をファンド化して助成策の充実
・ NPO「岩手クリーンカー普及センター」の設立
・ クリーンエネルギーのコミュニティバス走行
 を盛り込んだ。
【具体的な省エネ計画の策定】
@ 電力・熱:断熱効果の高い住宅での融資制度▽小中学校の省エネルギー教育モデル校設置
A 交通:燃費基準の策定やモーダルシフト(車から鉄道や船への移行)、パークアンドライド(鉄道の駅を中心とした車社会の縮小)
【地域特性を活かした産業振興】
@ 岩手型薪炭林バイオマス発電事業の展開にかかわる雇用創出
A 市町村レベルでのITを活かした流通システムの構築
なかでも薪炭林については「岩手県裏山油田開発」と名づけた里山の利用法で、GIS(地理情報システム)を用いた森林管理システムを前提に、バイオマス開発を進め、林業法人の設立などを盛り込み、住宅については、イーハトーブ住宅を前面に押し出した政策を提言した。
白書に対して、岩手県資源エネルギー課の高橋敏美課長は「地域連携が軸になっているが、市町村間での意識に差がある。産学官の大学とのかかわりで地域の意識を向上する試みがまだなされていないので、参考になった。
木質バイオマスではあるが、そのほかで市民と企業、行政を結ぶ接点がまだ足りないと思っている」とアドバイス。
岩手・木質バイオマス研究会の金沢滋会長は「2030年から見た岩手を論じる手法、分散の統合というすばらしいテーマ設定。しかし、分散しているエネルギーや地域の意識をまとめたり、民間と行政を橋渡しするコーディネーターの人材育成という視点を持って欲しい」と話した。
 コーディネーターの飯田哲也・環境エネルギー政策所長は「エネルギー政策では20年というスパンが目安。岩手の薪炭林は特徴的で、林業の現状と切り離し、新たな産業が芽生える土壌があるのではないか」としめくくった。
このプログラムの概要と白書は、近日中にHPで公開される。
http://readlead.sfc.keio.ac.jp/LEAD/


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