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「森林のエネルギーを生かそうinきたかみ2003」〜スウェーデンの先進事例を学ぶ〜

森林を生かそうinいわて2003

◆県庁にて知事と会談

 

<ビヨルン・セタリウス教授とともに北上・花巻地区訪問>
日時;2003年3月26日(水)

◆沢内村役場 沢内村の取り組みについてブリーフィング、意見交換



沢内村長から村のエネルギービジョンが説明された後、セタリウス教授は「木質バイオマスの普及には環境にやさしいだけではなく、経済的であることが必要である。消費者は燃料と機器については使いやすく、安定性のあるものを望む」とスウェーデンの例をあげてアドバイスした。

◆雪国文化研究所 視察
チップボイラー(スイス・シュミット社製、出力20kw)について、セタリウス教授は「この大きさのチップボイラーはスウェーデンでは生産していない」と発言し、また生成した灰が固まっていることについて「燃焼温度・システム、空気の供給が影響しているのではないか」と示唆した。

  

◆フォーラム「森林のエネルギーを生かそうinきたかみ2003」〜スウェーデンの先進事例を学ぶ〜



場所;北上ワシントンホテル
主催;岩手木質バイオマス研究会、日本貿易振興会盛岡貿易情報センター、北上地方振興局

[講演]
ベクショー大学 ビヨルン・セタリウス教授
「スウェーデンでの木質バイオマス利活用について」

バイオ燃料とバイオエネルギーには違いがある。バイオ燃料は木質燃料の他に農作物燃料、廃棄物燃料、泥炭なども含む。バイオエネルギーはバイオ燃料を使って熱や電気を作り出すエネルギーのことを言う。
スウェーデンにおいて直接的な燃料の年間消費量は石油が135TWh(T=テラ=1012倍)、バイオ燃料が63TWh、石炭が16TWhとなっている。発電は水力発電が79TWh、原子力が73TWh、コジェネが8TWhである。発電は様々な手段をこうじて行うので損失が生じ、27TWhとなっている。地域暖房ではバイオ燃料と廃棄物を利用したものが35TWh、化石燃料は16TWhである。
エネルギー全体の年間損失量は178TWhになる。エネルギーの中で最も多く使われるのは実は損失である。損失の大部分は原子力発電のような集中的なエネルギー生産を行っているところからであり、最も非効率的である。家庭で使われるエネルギーの消費量は156TWhである。その中でバイオ燃料は15TWh、地域暖房は35TWhである。地域暖房の主要な原料はバイオ燃料と廃棄物である。
産業で使われる1/3のエネルギーはバイオ燃料である。輸送に使われるエネルギーを除外すると、市場で活躍している燃料は一般家庭用と産業用である。人々は産業でバイオ燃料が使われていることは忘れており、家庭用でバイオ燃料がほとんど使われていると思っている。1/2のバイオ燃料の利用を考慮に入れていない。
木質のバイオ燃料には2つの形がある。1つは未加工の燃料のことでチップ、樹皮、薪などである。10kW級の家庭用では薪が固定床で使われる。1MW級の小さなコミュニティー、空港、木材加工工場ではチップが移動床で使われる。10MW級の中規模なものでは紛粒状のチップが使われる。現在スウェーデンでは大規模な建物に配給するエネルギーに関して問題が生じている。未加工の燃料ではこのスケールでは燃焼上に問題を生じるからである。
もう1つは加工した燃料でペレットやブリケット等である。10kW級から1MW級まで使われる。100MW級になると粉状になったものを使う。しかし加工した燃料は10MW級のところでは使われていない。
全てを網羅するシステムを作るにはチップ、粉状になったもの、ペレット、ブリケット等全ての燃料を総動員して使わなければならない。森林がたくさんあり、林業が盛んなところにはこのような様々な品質の燃料を供給できる可能性がある。
一般家庭向けの燃料でどのようにしたら市場を活性化できるかを考えると、選択肢として簡単なのはペレットである。ペレットの材料はおが粉や製材所から出た端材である。絶対的な必要条件は燃料が乾燥していること、圧縮度が700気圧であることである。圧力をかける前の含水率は15%以下でなければならない。スウェーデンで発売されているペレットは40種類ある。デザイン、質、燃焼の仕方も様々である。
一般家庭へのエネルギー供給は3種類ある。暖房と給湯と電気である。ストーブが供給するのは暖房だけであるから、家庭で必要とされるエネルギーの中で1/3しか供給しないことになる。スウェーデンでは一般家庭では地下室にボイラーが備えられている。このボイラーを通じて供給されるのは暖房だけでなく給湯もあり、石油、ペレット、チップ用も搭載可能である。さらに2種類のエネルギーを供給できるということでストーブと比べて温暖化、二酸化炭素の削減に大きな影響力を持つ。もし、ストーブの代わりにこの種のボイラーを導入すると、2種類の熱源を供給するのでペレット等の販売が2倍に膨れ上がることになる。
スウェーデンではペレットは市場で石油や電気と競争関係にある。ペレットの価格は石油に比べて60%である。ペレットの長所はコンパクトで長い距離でも輸送可能ということである。電気の輸送コストに比べてペレットの輸送コストは1/10である。エネルギーの面でも輸送の面でも非常に効率のいい燃料である。
現在ペレットの90万トンが一般家庭で消費される。そのうち6万トンがストーブ、3万トンがバーナーで残りが地域暖房に使われる。ペレット製造業者のストーブ、バーナーへの供給は地域暖房に比べると小さい。しかしバーナー、ストーブの製造業、販売業者は一般家庭へ器具を販売する可能性は非常に大きく、10万台単位になる。今年考えられている売り上げは1万台のバーナーと2万台のストーブである。
市場は非常に拡大中で2,3年には、全てに供給可能な量のペレット生産が行われる予定である。木質バイオ燃料の業界は横ばい状態の景気が続いたが、市場がある時に活性化して売り上げが非常に伸びる現象が生じている。
ペレットの輸送は長い距離が輸送可能であるが、できれば地元で燃料を調達したい。スウェーデンでは現在、加工燃料を製造する工場がいつもどこかで建設されている。2年後には需要の全量をカバーできる工場が建設されることになる。2001年の年間のバイオ燃料使用量は98TWhだが、可能な限りバイオ燃料を使用することにすると150TWhになると推測している。市場は大幅な拡大が見込まれる。
家庭用の薪ストーブのマーケットは後退している。薪からペレットへ移行している。なぜならば現在、男女とも仕事についていることが多い。時間的にもエネルギー的にも薪を処理する余裕がないということである。
環境にやさしいという面から見てもペレットは圧倒的に利点がある。二酸化炭素の放出は薪に比べて非常に少ない。ペレットが使いやすい目安になるのは灰の量である。薪から出る灰の量が1.1%から5%とすると、ペレットは0.5%以下である。典型的なスウェーデンのペレットから出る灰の量は0.3%になる。灰をストーブやバーナーから出す頻度は1〜3週間に1度である。
ペレットと同様に競争力を持つ燃料としてブリケットがある。輸送が簡単で乾燥しているが、一般家庭向きではない。同じ市場でペレットと競合しているわけではない。ペレットよりも大きな施設、スポーツセンターや病院等で活用されている。ブリケットには違う市場が存在し、顧客となっているのは一般家庭ではない。
家庭でストーブだけでなく給湯も可能であるならばボイラーも考える必要がある。もし少し大規模なものならば必ず貯蔵施設が必要で、1回に運ぶ量も大量になるのでトラックを利用しなければならない。同様の方法が日本では灯油の配送に関して同じことが言えると思う。小規模なものであれば貯蔵施設も小さいので自分で地元の商店やガソリンスタンドに行ってビニル袋を持参して買う簡単な方法になる。小規模なものはコストがかからないが、利用者がこまめにペレットを購入しなければならない手間がかかる。
市場を開拓して充実したものにするには20年かかることを自覚してほしい。最初にスウェーデンにペレット工場が建設されたのが1970年代の終わりだった。やっと2002年の終わりに近づいてペレットの市場が飛躍的に拡大してくることになった。様々な理由があるが、協力体制が不可欠であった。地方自治体や民間企業等全ての人々が協力しないといけない。
ペレット工場を建設したいならば、投資費用は安くないことを理解すべきだ。材料の湿度が高ければ非常に手間がかかる。もし自前の木材加工場を持っていないならば、材料をどこかで購入して運ぶことになる。その場合は長期間にわたり信頼のおける契約を結べるかを考えるべきである。これまでの産業間で行われた契約と違い、おがくずのようなものは原材料とみなされていないので、銀行や保険会社が必ずしも信頼をおくわけではない。スウェーデンの例ではこの分野がビジネスとして成り立っていなかったので、小さな加工業者が的確なアドバイスを受けることができず非常に当惑したことがあった。
電力市場の自由化によって価格に変化が現れ、各家庭で受け取る請求額も上がったり下がったりした。一番先に消費者が問題にしたのは価格であった。電力料金の中身は電力だけではない。プラス輸送費、配給手間費も含まれている。電力料金は電力コストの10 倍が輸送料に払われている。多くの人が電力の購入をやめてペレットに入手先を変えた。電力料金の価格も自由化に伴って非常に上がったがペレットは下がった。
しかし、自由化に伴う影響はその反対の面もある。すでに廃棄物と考えられていた燃料の導入について20年間、法律的に様々なアイディアが出たが補助金が取り上げられたり取り下げられたりした。このために人々は非常に不信感を持った。市場の中で不信感を取り除くのに長い時間がかかった。
当初、非常に大きなスケールの電力消費に関しては年間30万トンの需要があった。業者はその分だけ供給できる見込みが必ずあった。一方で個人の消費者に対しての需要も今後あるのではないかと時期をうかがっていた。つまり基本的な市場になるものが必要だということである。いくつかの業者が長い年月の間、基本的にベースとなる市場に頼りながら、家庭への供給が始まるであろうと見込みを持って業務活動を続けていくプロセスが必要になる。
燃料を供給する側の視点では、しっかりとしたインフラが必要だ。燃料の供給システムを確立することが絶対的な必要条件になる。非常に大きな規模の工場でペレットを生産するには、絶対安全でしっかり供給できるというインフラの確保が前提条件である。
各個人の顧客から見た視点では燃料の安定供給と機械の信頼性が注目される。スウェーデンの南部では冬季の間にストーブがついたり消えたりする回数は1万回から2万回の間である。必要なときに着火できない状況になると24時間以内に給湯施設の水が凍ってしまう。最初の世代に開発された機械では燃焼に関してうまく作動しなかった例が生じた。
当初はストーブが100台くらいしか売られなかったが今になって信頼性を獲得するようになり、1万5千台ほど売られるようになった。得られた教訓は絶対に不確かな段階の製品は市場に出してはいけないということである。もし失敗作が一旦市場に出たならば、信頼を回復するには10年くらいかかる。
最初に製造されたペレットの品質は非常に低く、灰の量が多かった。灰の融解温度も非常に低く1,000度くらいであった。効率的なボイラーやストーブでも灰の融解温度が低いと問題が生じてくる。ペレットの品質が粗悪であるとスクリューでバーナーに供給する過程の一部が壊れる可能性がある。技術上の問題があったので当時はこの産業は伸びず、顧客も全く振り返ってくれなかった。5年前からやっと業者間で協力関係が生まれるようになった。それまではバーナー業者とペレット業者が非難の応酬合戦をしていた。
市場の確立、燃料や機器の品質の向上には人々の間の協力とコミュニケーションが必要である。市場をある程度確立すると個々の家でペレットの購入が始まる。このような必要条件が満たされたときにさらに市場が活性化する。スウェーデンでは非常にたくさんの間違いを犯してきたが、20年かけてここまできた。日本では同じような間違いをしてほしくない。私たちの経験や私たちが今まで開発した市場でうまくいっている製品から学んでいただけることが望ましい。

◆サンポット株式会社 花巻工場 視察



いわて型ペレットストーブの製造現場を見学し、セタリウス教授は点火・灰ため構造部分に非常に興味を示していた。スウェーデンで問題になっているのはハイドロカーボン(不完全燃焼による燃料の燃え残り)であり、ある程度クリアしないとヨーロッパでは機器を市場に出すことはできないことを説明した。

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