ホームへ戻る

LL事業 住田町
2003年3月26日


森林のエネルギーを生かそう in すみた(於 農林会館多目的ホール)



ソーンクヴィスト教授講演要旨


バイオエネルギー、森林に関するエネルギーについて話しをしたい。最初にスウェーデン、私の住んでいる地域について話しをしたい。
 SEは900万人、50万平方キロの国土の半分が森林だ。縦に長く1500km、幅は500kmである。私は南部のユータランド地方だ。国土の20%にすぎないが人口の半分が住んでいる。
 ユータランドは森林の30%を占め、蓄積増加の33%を占める。経済的に価値のある森林の40%がここにある。ここは製材所の雇用は33%、パルプの雇用は44%、家具・建具については75%を占める。
 ヴェクショーは非常に古い都市だ。現在75,000人がヴェクショー市の中心部住んでいる。
 ヴェクショー大学はルンド大学の一部として1967年にスタートした。1999年に大学として独立した。2003年には12,000人の学生、従事者は900人だ。学部は2つある。
 スウェーデンの森林所有形態は50%が私有林、40%が会社、残り10%は教会やコミュニティである。樹種は単純でマツがSEでは39%、ユータランドでは29%となっている。ノルウェースプルースがSE43%、ユータランド50%である。このほかカンバやブナ、ナラなどがある。
 次ぎに木材の利用について。生長量年間1億m3のうち伐採されるのは7000万m3だ。この残りの3000万m3のうち1500万m3は風害や害虫などで使えなくなり、のこり1500万m3は規制などで伐採できないものである。350万m3は梢端部分。製材3000万m3、パルプ3100万m3、500万m3は燃料になる。1300万m3が厚い板へ、100万m3が薄い板 樹皮が600万m3でる。よって1100万m3が住宅の暖房用に回される。製材工場ではチップが1000万m3生産される。4100万m3がチップに回ることになる。2500万m3が紙に使われ1600万m3がエネルギーに使われる。総計4200万m3がエネルギー利用となる。つまり伐採されたもののうち半分がエネルギー利用となる。
製材工場での収入の面からは、板生産で82%、チップ18%、エネルギー利用へは0.7%である。昨年からはペレットの需要が高くなっているので、オガ粉の価値が上がってくるだろう。

教授講演

この25年間、徐々に森林のエネルギー利用が浸透してきた。スカンジナビア地域ではチップの熱利用の方法には3つのシステムがある。
 ひとつは、ハーベスタを持ち込み伐採と仕分けをする。移動式チッパーが林地でチップ生産を行い直接地域熱供給のプラントへ持ち込む。
 2つめは、ハーベスタで伐採、スキッダで土場へ集め、土場でチップ化する。
 3つ目は、ハーベスタとスッキダがはいる。このスキッダは束ねる機能があり、それを別なスキッダで長さをそろえ土場へ運び出す。
 チップの保管の問題点について、ひとつは温度の上昇が。1年間で60度ぐらい上がってしまう。7m積み上げると90度ぐらいになってしまうこともある。さらに8m以上積み上げると火災が起きてしまう。
 もうひとつは、保管している間に含水率が上がってしまうことだ。3ヶ月間保管していると、内部は20〜30%となるが、外側は75〜80%になる。
 3つ目は木材の成分が失われてしまうことである。温度や含水率の変化はエネルギーも変化する。1年間にエネルギー量の40%が失われることもある。だからきちんとした方法で保管することが大切である。
 4つ目は、微生物の活動が活発になることだ。例えばカビなど。放っておくと1ヶ月?で胞子が1000倍になる。健康に被害を与えることもある。実際に私は病気になってしまったことがある。
 最後は栄養素の問題で、森林から栄養素を持ち去ってしまうことになるが、その分を何らかの形で還元しなくてはいけない。
 (スライド)伐採の方法は、ハーベスタである。グラップルがひとつのものとふたつのものがある。チッパーは様々ある。伐採現場でチップ化するもの、土場で行うものなどである。チップを積み重ねる際は、オガ粉などを混ぜないことだ。自然発火する可能性が高くなるからだ。これは12m3程度積んだチップだが自然発火したものだ。水をかけてもまた発火してくる。扱いには注意がいるということだ。
 利用の事例だ。まずは小規模利用ということで、私の家を紹介したい。25m3の固形燃料(木質?)が必要となる。新しく導入した暖房システムはガーデンハウスに カンバを伐採し払った枝は林地においてくる。3mに玉切りしトラクタで運んでくる。薪を作る道具で薪を割る。小屋の中に薪を積んで乾燥させる。ボイラーがある小屋なので数週間である程度まで乾燥する。薪ボイラーで2000リットルのタンクの水を100度になるまで熱する。一度暖めると次の日まで暖かい。500リットルタンクが家の中にあって、こちらは電気で暖める。薪ボイラーを動かしたくないときはこれを使う。
 こちらはチップボイラだ。湿ったチップでも燃やすことが出来る。燃料の供給はスクリュウフィーダーでおこなう。ペレットボイラーも同様だ。
 手軽なチッパーとしては農業用トラクタにつけるユニットもある。

質疑応答

司会 補足だが、チップは比較的大きな施設で使うことが多い。たとえば地域熱供給施設やコージェネレーションの施設だ。ペレットがいいのかチップがいいのかという二者択一ではなくて、適材適所で使うべきということを昨年のミッションの際にヴェクショー大学で教えてもらった。
 町長が質問したがっていたが、家庭用チップボイラーでホッパーへのチップ投入は手動でやらなくてはいけないのか。
ソ 自分で持ち上げて入れなくてはいけない。
A チップを相当に積み上げていたが、雪がかぶっていても発火するのか。
ソ 外気がマイナス10度であっても、3m積み上げれば1週間で内部の温度は60度まで上昇する。
A SEと日本では相当に地形がちって、機械が入れないと思うがどうですか。
ソ 確かに日本の山にはSEの機械は適していないと思う。しかし、ノルウェーのほうのシステムは非常に参考になる。
司会 どういうシステムでバイオマスを運び出すのかというのは非常に重要な点だ。SEの機械が役に立たないということではなくてどういう使い方をするのかということだ。山でチップにするのかプラントでチップにするのか、また全ての林地残材を収集する必要も無いだろう、などである。
A 日本は雨量が多いが、雨の問題は無いのか。(林地残材が川に流れ込んだりすることは無いのか)
ソ SEでは林地残材に防水用の紙をかけておくことはしている。
司会 SEでは防災上の問題はない。ただ、含水率は燃焼の効率に関わってくる。発電の場合含水率の高い方がよかったりする。
B 山の斜面から集材するのに最もコストがかからない方法は。
ソ 専門ではないのであまり役に立たないが、スキッダがよいかもしれない。ノルウェーではケーブルクレーンが使われておりこれもよいかもしれない。
司会 林道まで集材してそれをその場でチップにするのが一番いいようだ。住田町でも現在調査中なのでその報告を待って欲しい。
ソ さっき、チップに関しての問題をあげたが、枝はバイオマス燃料の一部でしかないということだ。伐採量の17%程度(500万m3)しかないという点をもう一度思い出して欲しい。
C 樹種でスプルースが多いようだが、どうしてカンバを薪にしているのか。
ソ SEではカンバは他に用途がないためエネルギーに使っている。
司会 一番の理由はそばにあるからだとのこと。時間になった。最後にもう一度町長から。
町長 少し宣伝を。世界各国のペレットストーブを導入している。多くの人にペレットに親しんでもらいたいと思っている。
司会 最後にソーンクヴィスト教授と通訳の徳永さんに拍手を。
(拍手)