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    木質バイオマス利用促進シンポジウム「森林とエネルギー」開催!


 岩手県と岩手・木質バイオマス研究会(会長:遠藤保仁会長、200人)は1月26日(日)、盛岡市のプラザおでってで木質バイオマス利用促進シンポジウム「森林とエネルギー」を開いた。会場には大分県や北海道などから計300人が集まり、実際にどのように利用するかを真剣に考えた。
 シンポジウムは4部構成。会議室では展示やビデオ上映も。第一部の基調シンポジウム「木質バイオマス どんふうに使えばいいの?」では、長良川訴訟で活躍したアウトドアライター、天野礼子氏が「木質エネルギー利用が日本を救う」と題し講演。

増田寛也・岩手県知事誕生の1995年から二年後に二酸化炭素削減を取り決めた京都会議が開催されたことや、1999年にヨーロッパバイオマス協会のケント会長をスウェーデンから招いた後に岩手・木質バイオマス研究会が発足し同会と共催した環境ミレニアムフォーラムで「環境首都」を宣言したことなど、二酸化炭素削減や木質バイオマスの動きが増田県政とともに歩んでいることを説明。国の公共事業見直しの動きも呼応していることを解説した。
 さらに「会場に来ている人だけでなく、県民一人ひとりが木質バイオマスや二酸化炭素削減を考える地域になってほしい。そして、中央に新しい空気を送ってほしい」とエールを送った。



パネルディスカッションでは、木質バイオマスの将来を描いてみた。パネラーに、多田欽一・住田町長▽渡辺彰子・岩手県消費者団体連絡協議会副会長▽吉成信夫・岩手こども環境研究所代表▽遠藤保仁・岩手・木質バイオマス研究会会長が座り、金沢滋・岩手・木質バイオマス研究会事務局長がコーディネーターに着いた。
 それぞれの自己紹介の後、吉成氏は「ドイツの環境教育では、クラス対抗で省エネルギー度合いを競う。賞品は一日休み!楽しみながら真剣にやることが大切。市民レベルでできることもたくさんある。シンクタンクではなく、住民の中で実践していくdo タンクでいたい。子どもたちは、身近なところから始まる木質バイオマスに関心が高い」と述べた。渡辺氏は「省エネルギーのアドバイザーとして、実際に家庭で実践している。木質バイオマスの推進には不安と期待があり、捨ててある木を利用し同時に成長を見守り、みどりを大切にしていくことも大切」と単なるエネルギー利用ではなく、循環利用を訴えた。
 多田氏は「そうした不安に応えるべく、住田町では町内森林を持続可能な経営にする森林認証の取得に取り組んでいる。全国で初めて木質ペレットによる暖房を使った保育園では、子どもたちが素足で走り回っている。長い取り組みの中で、町がコストなどリスクを抱えることは理解していただいていると思う」と町が石油に比べ割高な初期投資を負担することのコンセンサスの大切さを述べた。
 遠藤氏は「スウェーデンでは、中東など産油国に頼ることのないエネルギーの安全保障面から木質バイオマスに取り組んでいる。昭和50年代に石油危機があり、石油価格が高騰したとき日本で初めて木質バイオマスに取り組んだ。しかし、石油価格が暴落しすぐに見放されてしまった。当時を考えると、メンテナンスが楽な使い勝手のよい機器(出口)が必要。意識のある市町村がどんどん名乗りを挙げている。研究会は産学官の組織だが、金融、マスコミといった分野の協力も今後必要になる。県も、既存の組織に任せるのではなく、横断的な対策推進室のような組織への改革が必要ではないか」と行政に対しても苦言を呈した。
 これらに対して、コメンテーターの天野礼子氏は「消費者の渡辺さんの反応はよくわかる。エネルギー利用の前に、私たち自身が日本の木を、住宅などもっと積極的に利用していくことも肝心だ」と指摘した。


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 第2部は、昨年11月にスウェーデン・ヴェクショー市を訪問した第二次ミッション団が「進む! 木質バイオマス利用〜ヴェクショーの取り組み」と題して報告。金沢団長が概要を説明後、三田農林取締役の三田林太郎氏がスウェーデンの森林からバイオマス生産までの流れを解説。「現状を考えれば、小規模分散のバイオマス利用を、という姿が望ましい。枝条だけでなく林地に放置されているとび腐れ材や曲がり材も使い、バイオマス燃料に回す割合をスウェーデンよりずっと高くしていくべきだ」と指摘した。
 葛巻林業取締役の福島尚氏は、ペレットストーブ、ペレットボイラー、チップボイラーの特性を図で示し「まず熱利用を考えるべき。その上で、規模などから適した熱源を選択すべきだ」と話した。
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第3部は「いわて型ペレットストーブ説明会」。県工業技術センターの園田哲也研究員がサンポット(本社:埼玉県川越市)と共同開発したペレットストーブについて、画像を使いながら解説した。
なかでも、おが粉ペレットとバークペレットとの違いから、バークペレットに的を絞って開発した経緯を説明し「いわて型は2.3kW/h〜9.3kW/h (2,000kcal/h〜8,000kcal/h)で、強制排気することにより長い煙突をなくし、世界標準になった」とした。
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 第4部の「木質バイオマス機器の導入に関する説明会」では、岩手県林業技術センターの主席専門研究員、深沢光氏が「チップは平準運転のほうが向いており、ペレットはチップより間断運転は可能」と特性の違いを述べた。その後、東北ピーエスの長土居正弘氏も「木質バイオマスはピークの需要に合わせると設備投資が過大になる可能性もある。バックアップを石油にするなど、熱需要にあわせた形を模索すべきだ」と暖房に関する基本的な考え方を強調した。
最後に、葛巻町内で老人保健施設を設計した、久慈設計の戸田雅和氏は「検討段階で、各種コスト比較を行った結果、年間の燃料費削減金額による初期投資回収年数が、補助金の交付がある場合で約4年、ない場合では約10年との試算結果であった。導入するに当っては、発注者の理解がないとコスト面も考えるうえで難しいかもしれない」と述べた。


木質バイオマス利用促進シンポジウム
「森林とエネルギー」

主催:                 岩手県
岩手・木質バイオマス研究会
日本貿易振興会(JETRO)盛岡貿易情報センター
日時:2003年1月26日(日)
   9:30受付開始
   10:00 開始
   17:00 終了
場所:プラザおでって
  (盛岡市中の橋通1−1−10 電話:019−604−3300)
開催概要
1.基調シンポジウム   主催:岩手県、岩手・木質バイオマス研究会
「木質バイオマス どんふうに使えばいいの?」
時間:10:00〜12:30
場所:おでってホール(200人)
基調講演:長良川訴訟などで活躍し、増田知事との対談など「環境首都いわて」を側面から支援していただいているアウトドアライター
    天野 礼子氏   
「木質エネルギーが日本を救う」
パネルディスカッション 
   コーディネーター  岩手・木質バイオマス研究会事務局長  金沢滋氏
   パネラー@住田町長  多田欽一氏
       A岩手県消費者団体連絡協議会副会長  渡辺彰子氏
       B岩手こども環境研究所  吉成信夫氏
       C岩手・木質バイオマス研究会会長  遠藤保仁氏
   コメンテーター   天野礼子氏
天野礼子氏 略歴
 1953年、京都市生まれ。同志社大学文学部美学卒業。開高健氏に師事し、"わが国初のアウトドアライター"の名を与えられる。その後、旅・酒・食のエッセイに活躍の場を広げる。
<主な著書>
 「あまご便り」(山と渓谷社)「森からの贈り物」(東京書籍)「川よ」(NHK出版)ほか

2.スウェーデンミッション報告会  
「進む! 木質バイオマス利用〜ヴェクショーの取り組み」
主催:日本貿易振興会盛岡貿易情報センター、岩手・木質バイオマス研究会
時間:13:30〜14:50
場所:おでってホール(200人)
目的:交流事業を展開している「脱化石燃料宣言」をしたスウェーデン・ヴェクショー市へ昨年11月派遣した、ミッション報告会。

3.いわて型ペレットストーブ説明会
 主催:岩手県
 時間:15:00〜15:30
 場所:おでってホール(200人)
 目的:暖房メーカーのサンポット株式会社(本社:埼玉県、研究開発部:花巻市)と県工業技術センターの共同開発によるペレットストーブを広く知ってもらう。秋には本格発売する予定。

4.木質バイオマス機器の導入に関する説明会
主催:岩手・木質バイオマス研究会、岩手県
時間:15:40〜17:00
場所:おでってホール(200人)
目的:自治体や設計士など、木質バイオマスを実際に導入する際の具体的な配慮などを探る。

5.展示
木質バイオマスあれこれ
企業や県工業技術センター、林業技術センター、岩手・木質バイオマス研究会、独立行政法人森林総合研究所などのパネル展示。ビデオ上映も。



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